出版社内容情報
萩原 葉子[ハギワラ ヨウコ]
著・文・その他
内容説明
娘の目に映った“不世出の詩人”の真実。―父はお酒を飲むと、まるでたあいない子供になってしまう。そして酔ってくると、次第にお酒をびしゃびしゃお膳にこぼしはじめ、それにつれてお菜を、膝の上から畳の上一面にこぼすのだった。―室生犀星をして“不世出の詩人”と言わしめた萩原朔太郎。口語自由詩というスタイルを確立し、一躍時代の寵児となった朔太郎だが、その私生活は、風呂嫌いで、女物の下駄を平気でつっかけ、食事のときは前掛けをさせられていた、など驚くべきものだった。いちばん間近で朔太郎の真の姿を観察していた長女・葉子が、父はもちろん、愛人をつくって家を出た母やいつも辛く当たる祖母のこと、そして室生犀星、三好達治、北原白秋、佐藤惣之助ら作家たちとの交流を克明に描いた文壇デビュー作。
目次
晩年の父(晩酌;手品 ほか)
幼いころの日々(馬込村のころ;北曲輪町にて)
父の再婚
再会
折にふれての思い出(一)(室生さんと三好さんのこと;北原白秋のこと ほか)
折にふれての思い出(二)
著者等紹介
萩原葉子[ハギワラヨウコ]
1920年(大正9年)9月4日‐2005年(平成17年)7月1日、享年84。東京都出身。1959年『父・萩原朔太郎』(第8回日本エッセイスト・クラブ賞受賞)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ロビン
16
日本詩界の巨人・萩原朔太郎の息女であられる葉子さんが、父との思い出を率直で切実な文体で書かれた本。朔太郎は親友の犀星が子どもを亡くした時に恐らく発破をかける意味で「子供が死んだくらいで意気阻喪してどうする・・」という旨のことを書いていたので父親としてどうなのかと心配であったが、朔太郎なりに娘を愛していたと分かりほっとしつつも、その愛情が葉子さんにとって十分だったとは言えないとも感じ、葉子さんをひどく不憫に思った。朔太郎がどこまでも詩人であり、その重い業を背負っているといっても、子供にわかろうはずはない。2024/09/16
キノコン
0
萩原朔太郎の娘の葉子さんの著、この作品がそれからの執筆のきっかけになったと書いてありました。お祖母様がそれはそれは激しいご気性であり、お母上がそれにも負けない奔放?な方のようでそりゃ父上も毎晩泥酔したくなるよね。読みやすく綺麗な文章ですが、ご本人の引っ込み思案ぶりに多少いらいら。父が案外不器用で荷物を包ませるとぐさぐさになると書いてありちょっと面白かったです。2022/10/26