出版社内容情報
倉橋 由美子[クラハシ ユミコ]
著・文・その他
内容説明
大学で知り合い愛し合うようになった一組の若い男女。だが、期せずして自分たちの両親が、夫婦交換遊戯を長年にわたって続けてきたことに気づいてしまう。結婚を夢見る男女と、一方で両親たちが繰り広げる艶麗な恋愛譚を通じ、生涯“物語文学”を追求し続けた倉橋由美子が、古代神話、源氏物語等の系譜を織り込んだ意欲作。倉橋文学後期を代表する「桂子さんシリーズ」の第一弾である。
著者等紹介
倉橋由美子[クラハシユミコ]
1935年(昭和10年)10月10日‐2005年(平成17年)6月10日、享年70。高知県出身。1961年『パルタイ』で第12回女流文学者賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
64
スワッピングに近親相姦というエグい題材を扱いながらも、文章はあくまで格調高く美しい。登場人物の誰一人として感情移入できないのに、読みたい欲求が喚起される。これが小説の力なのだと思う。ラストの数行で、ヒヤッとさせられて、最初から読み返したくなる。2018/01/07
もりくに
63
久しぶりの倉橋由美子。「夢の浮橋」は、源氏物語の最終帖 だそうであり、また「旧仮名」で書かれているが、どちらにも造詣がないので、この本の神髄には迫れないだろう、官能小説(?)などと思ってしまうが、拙い感想を。70年前後の全共闘運動の時代の話。「パルタイ」でデビューした著者らしく、その動きには冷たい。彼女は右左関係なく、「政治的な」動きには懐疑的で、「美」の世界を追求したということか?。あの時代に、「‥ですわ」と話す女性は周囲にいなかったので驚いたが、そのような話し方をする回想が存在したというなのだろう。2024/11/13
かもめ通信
20
恋人との関係、ジェイン・オースティンで書く卒論、大学紛争、夫婦交換遊戯……。スキャンダラスな側面を持ちつつも、京都の情景、茶の湯の作法、オースティン談義、仲秋の無月…と、どの場面も丁寧で美しく、そこここにちりばめられ埋め込まれた仕掛けや秘密があるようにも思われて、場面場面を二度三度と読み返したくなる不思議な魅力が。2025/02/25
桜もち 太郎
16
70年安保という騒々しい時代に、登場人物たちは独自の世界観のなかで優雅に生きる。主人公である桂子と恋人である耕一は結婚を前提の付き合いを。しかしそれぞれの両親はスワップの関係。桂子と耕一は兄妹説も。それを理由に二人は別れ別の男女と結婚。しかし面白いことに、目指すは両親たちのようなスワップの関係になることだ。一番積極的なのが桂子であることが面白い。物語的には学生運動や性の遊戯を取り扱っているが、全く生々しい描写はないのは残念。影響を受けたのは同じ題名を持つ谷崎潤一郎だと思う。淫靡な世界が明るく書かれていた。2024/01/05
まこ
14
読んでいて、恐ろしい小説。親世代のやったことが美しい言葉で美談として扱われ、桂子さんの結婚も親から見れば都合がいい。この作品は源氏物語のヒロインが途中で変わらなかったらを描いた話だと思う。桂子さんが最後に選んだ選択は親にとって都合のいいものから離れることだけど、これもまた恐ろしい方法。全共闘の存在が現状を壊そうとしつつもブレない桂子さんを表しているみたい。2020/11/06
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