感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はなん
25
表題作はとても切ない物語。その時代の権力者であることの悲哀もだし単純な男女の恋愛としてもまた同じ。これは初読だったので次はどうなるか?とハラハラしつつ、清原なつの風の独特のゆるさも楽しみつつ読むことができました。他の作品は昔懐かし作品で(w)題材の「差」がまた面白いかな。清原風味が隅々まで行き渡っていてなかなか楽しめる1冊でした。2016/09/24
neimu
19
淡々とした絵柄の中に歴史が織り込まれているのが面白い。この時代を漫画化した物はいくつかあるのだけれど、ここまであっさりした絵で進むものは少ないから。なのに、人間関係と史実はしっかり把握されフィクションと混ざり合い、切ない仕上がり。いいなあ。一般的には額田王・持統天皇など焦点が当てられやすいのだけれど、光明子に焦点が当てた上、聖武帝の華やかな時代の権謀術数の陰影をも見逃さない。けれども題名は「光の回廊」。このギャップがたまらなくいい。強い光の下には濃い影が出来る。権力があっても心だけはままならない。2013/03/10
サラダボウル
17
701年、藤原不比等の屋敷に妊婦が二人。不比等の娘宮子と、不比等の妻美千代。それぞれの子、聖武天皇、安宿部媛(光明子)はのちに結婚して安倍内親王が生まれる。軽快で美しいマンガの絵柄から、長屋王との政争、阿修羅像、行基、大仏建立による公害、、、、とテンポよく展開していく。歴史に疎いので何度か読み返したり、どこから創作なのか不明だけど(実在の僧、実忠を胡人としている)、平城京の人々をとても近くに感じた。「おまえはなぜ、阿修羅の名をもつ悪魔の王をこんな美しい姿に作るのですか」阿修羅像、いつか見に行きたい。2024/12/27
九鳥
17
仏像熱にて読んだ。「日出処の天子」と時代は近いはずなのに、びっくりするほど印象が違う。天皇家と有力豪族のドロドロとした覇権争い、国策としての仏教を描いてもふんわり軽やかなのは作家の個性なのかな。藤原家女性たち3人の生き方にそれぞれ切なさを覚える読後。2009/09/01
SEGA
11
ゾロアスター教の最高神かつ光の神アフラマズダも、敵対するヒンズーからみると悪魔の王となってしまうのですね。愛した人を殺させた安宿媛が、光明子という名を受け容れたのも、阿修羅像を造った彼を偲んでのことでしょう。安宿媛も宮子さんもやるせないが、皇位を手にした阿倍内親王も権勢を振るった仲麻呂も、その後を思えば幸せだったとは思われず、スッキリと飲み込むことのできない何かが残る作品でした。2016/07/07