出版社内容情報
「MW」を全世界にばらまくため、次々と罪を重ねてゆく男と、それを阻止しようとする神父。愛し合いながらも、彼らは闘わねばならない。作者には珍しいピカレスク物が大迫力で描ききられる。
▼第1話/協力者▼第2話/邂逅▼第3話/標的[ターゲット]▼第4話/封じこめ▼第5話/アラベスク▼第6話/倒錯▼第7話/エピソード▼第8話/仮面の訪問▼第9話/R基地に悪魔がきた▼第10話/人質▼第11話/破滅への出発▼第12話/最後の賭●登場人物/結城美知夫(関都銀行新宿支店勤務・男女の区別ない変装と明晰な頭脳を駆使し、毒ガス「MW」を世界にばらまこうと画策する)、賀来(神父・結城とはホモセクシュアルな仲であり、彼への愛と自分の信仰との板挟みになって苦悩する)●あらすじ/16年前の「MW」事件を告白しようと、日本新聞社を訪ねた賀来。彼はそこで社会部記者の青畑に会い、一部始終をぶちまける。青畑は賀来に協力を約束し、沖ノ真船島で調査を行なった結果、「MW」は現在東京近くの駐留軍基地にあることを突き止める。それを知って愕然とする賀来だったが、そこに「結城が倒れた」との知らせが入り、彼は教会を飛び出して結城の勤める銀行へ向かう(第1話)。▼結城は薬物中毒のような症状、すなわち「MW」の後遺症で倒れていた。結城は救急車で病院に運ばれ、賀来は病室の外で結城の容体を気遣うが、そこに政治家・中田英覚の娘が現われる。彼女は何と、すで
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鱒子
62
完結。社会的な話としては尻切れトンボのような感じを受けました。しかし2人の男の愛憎BLを軸にすることにより、ここで終わるのが最適なのだろうな、という気にもなりました。ピカレスで疾走感たっぷりです。2023/01/29
秋 眉雄
26
映画『アメリカが最も恐れた男・カメジロー、不屈の生涯』を観ました。とても印象的な場面に、毒ガスが続々と沖縄から運び出されるというシーンがありました。沖縄・毒ガス?そういえばと思い、この上下巻を本棚から数年ぶり、もしかしたら十数年ぶりに引っ張りだして読んだのですが、いろんな意味で驚きました。1976年に、ここまで描くことが出来ていたのか!2019/10/10
出世八五郎
21
現時点で上巻たる1巻の登録者数が995。2巻が831。2巻を読まない読者が161名もいる。1巻を読んだのに2巻を読まないのは勿体無い・・・とは思わないけど、ラストは期待するものではなく、サイコパスは最後までサイコパスだった。しかし、ここには自由が描かれてると思った。沢田研二主演の“太陽を盗んだ男”を思い出した。2017/02/19
ぐうぐう
21
タイトルの『MW』とはMANとWOMANの意味から取られているとする説があるようだが、ひょっとすると世界(WORLD ) の頭文字「W」と、その「W」を反転した「M」とを融合させたという意味かもしれない。この物語で手塚は、善と悪の対立を描いているのではない。結城という悪の化身のような男を登場させ、非情なる暴力を使い、社会の常識やルールや価値観を破壊していく。その果てにあるのは、善か悪かの勝利ではなく、混沌とした世界の姿だ。解決を持たない、持てない世界は、ひたすら反転を繰り返すしかないのかもしれない。2009/07/04
takka@乱読
19
この手塚作品もなかなか傑作。タイトルのMWはMAN(男)、WOMAN(女)を略したものである。花村萬月さんの解説がうまくこの作品を捉えていて、MWは男と女、天使と悪魔、真実と嘘などの二元論では語れない人間の心情を描いている。人間の思考は簡潔な答えを求めるため、二元論は都合がいい。それを手塚治虫が批判するために創られた作品がMWなのだろう。ストーリーの最後も圧巻。これはただの漫画で終わらせてはいけない作品だった。2021/08/30