内容説明
女盛りが過ぎようとする二人の女性の心情と戦前の良き時代を生き、没落した老女の生涯を古都の四季の移ろいの中、哀惜を込めて描く。鎌倉の四季と暮らしを綴る名エッセイスト、六九歳の瑞々しい小説デビュー作。
著者等紹介
甘糟幸子[アマカスサチコ]
1934年6月18日、静岡県生まれ。早稲田大学第二文学部露文科中退。在学中に「東京大学新聞」第1回五月祭賞に小説部門で入賞する。出版社系週刊誌の草創期には向田邦子氏等と共にライターとして活躍。結婚して鎌倉に居住。草花を育て、料理、鎌倉の自然、暮らしのエッセイを書く
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感想・レビュー
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kyoko
1
これから、この物語のなかの二人の女性・信子と菊子のような年齢になっていく自分を想像するとなんとも胸が苦しくなるような切なさがあった。けれどちょうど鎌倉を旅してきた後だったので、花々や自然を表す描写は目にその様子が浮かんでくるようで、切ないけれど、これが生きていくことということなのかな?と思った。2012/04/11
りんふぁ
0
逸子さんが痛々しく切ない。2014/02/14
駄々猫
0
桜の装丁に惹かれて手に取った。鎌倉を舞台に、老年にさしかかった女性二人と更に老いた叔母さんの物語。羽振りが良かった頃のプライドを捨てられず、話し相手に飢えた叔母さんの姿が哀しい。生き方も性格も異なる二人の女性の、老いてなお「ないものねだり」なところも哀しい。老いることが恐ろしくなる作品だが、若年で読んでもわからないだろうと思う。2009/04/28