緩やかさ

緩やかさ

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  • サイズ B6判/ページ数 201p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784087732344
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

パリ郊外の城で一夜を過ごすことになったクンデラと思しき作家夫妻。折しも城では国際昆虫学会が開催される。パリから集った男女、テレビクルー、政治家、解放後のチェコの学者もからんでの愛の非喜劇がくりひろげられ、夫妻は眠りを妨げられるのだが。―一方、200年の時空を超えて、18世紀のもっとも美しい短編小説「明日はない」の主人公の騎士がたちあらわれ、城館の貴婦人と愛の一夜を明かす。その振舞いの雅さに心奪われる作家は、朝霧のなかを立ちさる騎士の足どりの緩やかさのなかに、幸福のしるしを見る。なぜなら幸福はそれを味わい楽しむために、ひとを緩やかにするから。クンデラは、二つの世紀のヨーロッパの精神状況を、かろやかに、優雅に、重奏的かつ哲学的に描いた。さながらワトーの絵のように、またモーツァルトのように。本書はクンデラ初のフランス語執筆による小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たーぼー

46
哲学的技巧が随所に施され油断のならない作品だ。18世紀の快楽主義にオマージュを見出しつつ時代を隔て、人と人が出会うプロットですらクンデラの自嘲くさい。そして自惚れや虚栄心には皮肉で対抗する。『左翼はたった三つの単語でしか互いに理解し合えない。』左翼というより虚無的な価値観に浸っている人を揶揄してるのかな。インテリな人特有の同族嫌悪ってやつ?しかしチェコの学者など圧政に虐げられた者にはシリアスな見識。これはクンデラの経歴から来るものか。緩やかなれど言葉にならぬ言葉を強い確信でもって図星を決められた気分。2015/05/12

燃えつきた棒

20
僕の衰弱した文学的感性には、何も響かなかった。むしろ評論の方がしっくりきそうだ。2016/10/10

mak2014

6
小説のような形をとっているが、ラクロ『危険な関係』、ヴィヴァン・ドゥノン『明日はない』(18世紀の短編小説)などの小説においての快楽の形、登場人物たちの愛情、社会的地位、言語などへの想念を使い、クンデラがかなり自由に思考を漂わせ遊んでいる一編。エッセイとして読めばクンデラの興味の方向に共感できるのでとてもおもしろく読めた。2016/10/21

赤間悠一郎

1
誰からも理解されず、みんなを傷つけ、みんなから恨まれるようになるから気をつけなさい、的なことを私はいろんな人に対する警句だと本文から感じた。おばあちゃん「悪ふざけはおやめ」以下。2015/09/16

ハルトライ

1
物事をなるべく、単純に、紋切り型に解釈することに熱心になってしまうキッチュ化に対する憂いという訳者の読解は、そう間違ってはいないだろう。事実、途中の左翼の単語に関するくだりは確かにそれを示している。しかし、個人的に、この小説が何よりも面白いのは「セックスさえ、もはや紋切り型じゃないか!」と言いたいがために、アナルセックスのことを執拗に描いた結果、「肛門が、肛門が」となぜか肛門の話ばかりし始めるところである。真っ当な読み方もできるけど、相当珍品なものとしても読める小説。2015/06/27

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