内容説明
魯迅は、いまさら言うまでもなく、アジアを代表する世界的な文学者の一人です。たとえば、一九二七年、ノーベル賞選考委員会は上海へ特使を送ってきました。その年の文学賞を受けてくれるかどうか、魯迅の胸中を打診しにきたのです。ところが魯迅は、それから十年とは生きておりませんでした。そしてここに不思議は、彼の臨終に立ち会ったのが、彼の妻と弟のほかは、みんな日本人だったという事実です。日本を心底憎みながら日本人を心から愛した魯迅。それはこの魯迅とその妻と、彼の臨終に立ち会った四人の日本人の滑稽な、しかしなかなか感動的な物語です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
45
再読。蒋介石の国民党政府の弾圧を逃れ、地下に潜って中国人の意識を変えるための文筆活動を行っていた魯迅の四度にわたる逃避行を1回にまとめて戯曲にした作品。虫歯を治すための笑気ガスの麻酔が魯迅の深層心理を浮き上がらせるという筋立てが何とも巧みだ。戦争の機運が高まる中、魯迅を守るための国を越えた人々のつながりを、生真面目な劇ではなくコメディとして描いたところに、井上ひさしの彼らに対する深い理解と愛情を感じる。魯迅だけでなく、すべての登場人物が魯迅の生き方から自分自身について反省するその真摯さも心に残る。 2016/07/14
はやしま
18
(たぶん)初井上ひさし。とても読みやすくあっという間に読めたけど、さほど長くはない一冊の中に書き込まれた人の機微に圧倒される。魯迅の心の動きを追って苦しくなる。舞台を見てみたい。2018/03/08
練りようかん
12
谷崎賞きっかけ。1930年代の4回にわたる避難行を1ヶ月にまとめた戯曲で、舞台写真の高橋長英氏に想像が膨らんだ。魯迅は大の医者嫌い。しかし思わず医者ですと名乗らせてしまうほどの虫歯が面白い。歯みがきはどうしてるんだろと思う嗜好になぜだか生命の危うさを感じたのだが、後半になると「間接自殺」の縁部だったとわかるなるほどな運び。日本人と一般化してはいけないとしながらも嫌悪を滲ませたり、厭世観も覗かせて亡命なんて話も持ち上がるのだが、ユーモアのバランスと同名小説の主題が頭上で開く探究に引き込まれた。良かった。2025/10/30
てら
5
魯迅の内面の揺れ動き。間接自殺に向かう魯迅。罪悪感を背負い続ける人生の辛さ。その後、決意固める魯迅。クライマックスの読後感は静かな澄み切った爽やかさ。2024/01/27
パチーノ
5
第27回谷崎潤一郎賞受賞作品。 久しぶりに戯曲を読んだ。魯迅という人物に対する予備知識は皆無に等しかったが、非常に読みやすく書かれていた。他の井上ひさしの戯曲も読んでいきたい。2015/12/02
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