出版社内容情報
両親の離婚をきっかけに家出し、海を目指す少女の切ない冒険。交通事故で急逝した娘の代役として若作りをして成人式へ出席しようと奮闘する父と母。喪失から始まる、大人のための“泣ける"物語6編。
内容説明
伝えられなかった言葉。忘れられない後悔。もしも「あの時」に戻ることができたら…。母と娘、夫と妻、父と息子。近くて遠く、永遠のようで儚い家族の日々を描く物語六編。誰の人生にも必ず訪れる、喪失の痛みとその先に灯る小さな光が胸に染みる家族小説集。
著者等紹介
荻原浩[オギワラヒロシ]
1956年埼玉県生まれ。コピーライターを経て、1997年『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で第18回山本周五郎賞、2014年『二千七百の夏と冬』で第5回山田風太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
馨
1359
短編集。荻原さんの直木賞受賞作品。どの作品も良かったです。所々戦争を絡めている『海の見える理髪店』『遠くから来た手紙』『時のない時計』が好きです。残りの作品も、家族との関わりや絆、取り戻せない時間の流れと、己の成長等々短編の中に色々なテーマが沢山詰まっている良策でした。女性の心理描写がとても上手でした。2017/02/26
starbro
1292
荻原浩は新作中心に読んでいる作家です。本作は、親子をテーマにした6篇のしんみりした短編集。どの作品も味わいがあり、思わず涙腺が弛みます。オススメは表題作の「海の見える理髪店」と「成人式」です。どちらも映画に出来そうです。4月は、本作で読了です!5月も良い作品に出逢えますように。2016/04/30
ろくせい@やまもとかねよし
1208
6短編が収録。通底する主題は「いま」だったか。人間はいまを生きている。それは過去の自己の記憶で成立。しかも未来を抑制もする。そんな自己意識とは無関係に、人間は未来に向けて生きようとする。そのため、意識とは無関係に過去といまの折り合いを切望する。消極的で少しずつだが、とても優しく前を向かせる6つの折り合いが描写。「海の見える理髪店」は過去の後悔、「いつか来た道」は過去の悔しさ、「遠くから来た手紙」は過去の我慢、「空は今日もスカイ」は過去の逃避、「時のない時計」は過去の記録、「成人式」は過去にしたくない過去。2020/07/14
ウッディ
1127
海の近くでひっそりと理髪店を営む店主、彼にはある人に伝えたい言葉があった。そんな表題作を含め、家族に伝えられなかった言葉に関する短編集。直木賞受賞と言うことで、期待値が高かったせいか、静かな雰囲気の物語ばかりで、拍子抜けだった。ただ理髪店の雰囲気は好き、髭をあたる時の熱いタオルとか、ハサミの音など、気持ち良さが伝わってきました。親から子へ、子から親へ伝えられなかった想いが切なかった。これも悪くはないのだけれど、荻原さんの小説にはもっと面白いものも沢山あるのに、これで直木賞というのが少し違和感が残りました。2018/05/04
遥かなる想い
1024
第155回直木賞受賞作。 家族を描く短編集であり、安定した静謐な 物語集である。家族のあり方を丹念に描くが、 ひどく静かに読めるのが嬉しい.. 家族の間に通り過ぎた「時間」をそっと 味わう、そんな短編集だった。2016/09/04