出版社内容情報
夏見翔(かける)、中学二年生。僕はクラスで一番勉強ができない。
字の読み書きという、あたりまえのことに苦労しているから。だけど僕には、いつも一生懸命な母とどこか暢気な父がいて、大切なものを分かち合える友だちがいる。だからきっと、大丈夫。
人生のはじまりの時間を生きる少年少女たちと、人生のとまどいの時間を生きる大人たちを主人公に、それぞれの思いが交差した先に生まれる小さな光を描き出す連作短編集。生きることが愛おしくなる、成長と再生の物語。
内容説明
ディスレクシア(読み書き困難)のため生きづらさを抱える翔。息子のハンディキャップを受け止めきれずにいる両親。家族関係に悩みを抱えるクラスメイトの山上と中島。人生のはじまりの時間を生きる少年少女たちと、人生のとまどいの時間を生きる大人たち。それぞれの思いが交差した先に灯る、小さな光を描く連作短編集。
著者等紹介
神田茜[カンダアカネ]
北海道帯広市生まれ。1985年、講談師の二代目神田山陽門下に入門。1995年、真打に昇進。女性の心情を面白く切なく語る、独自の新作講談で人気を得る。2010年、小説『女子芸人』で第6回新潮エンターテインメント大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
201
北海道出身の作家さんで初読みの神田さん作品でした。こちらも集英社さんの『ナツイチ』企画で気になった作品でしたが、とてもいい話でした。お涙号泣というようなビッグウェーブはありませんが、登場人物の誰もがまっすぐにとにかく一生懸命な姿に胸がアツくなります。主人公はディスレクシア(読み書き困難)という'特徴'をかかえる「翔」で、彼の周りにはクラスメイトで、それぞれの家庭の事情をかかえる「まほり」と「山上」がしっかりとつながりを保ちます。特に「翔」と「まほり」の本当にピュアな間柄に、ココロが洗われるようでした。2016/06/29
風眠
155
ある人、または自分が何か問題を抱えていて、それが原因で生活が困難になってしまう状態を「障害」と呼ぶのだろう。その「障害」を自分で分かってしまう辛さは、当事者でないと絶対に分からない辛さだろう。主人公の翔(かける)は思う、「助けるふりをして本当は障害者をさっさと向こうへ押しやって、見えない所で働かせようとしてるんじゃないか。そんなとんちんかんな支援はこっちからお断りだ」と。グッサリ刺さった。弱者に厳しい社会構造、突きつけられた。ディスレクシアの少年と、両親、クラスメート、それぞれの視点で描かれた連作短篇集。2014/05/04
mocha
98
読み書き話すことに困難が伴うディスレクシア。本人のつらさもさることながら、だんだんと壊れていく母親がつらい。同級生山上、まほりの家族の問題もなかなかに重かった。『WONDER』を読んだばかりだったので、ハンデを持つ子どもをあくまで明るく愛情いっぱいに包み込むあちらの家族と引き比べてしまう。こちらの親の葛藤の方がリアルな現状なのかもしれないが、ザラリとした不快感が残った。2018/06/06
ムーミン
90
識字障害のリアルな困り感、苦しさがイメージできました。似たような苦しさを抱えながら日々を送っている子がいるとすると、いたたまれなくなります。2023/09/19
モルク
84
ディスクレシア(識字障害)をもつ中学生翔。読み書き話すことに困難を伴うが、見かけは普通なのでまわりに理解されず生きづらさを感じている。そして彼の現状をなかなか受け入れられない母そして父、家族の悩みを抱える同級生の山上とまほり。翔の優しさと心の成長がいじらしい。まほりとのちょっとあまずっぱい感じにもほっこり。「誰の中にもキラリと光るものがある」いいね。2018/11/06
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