内容説明
暗闇をさまよう明日羽に、叔母のロッカさんは“リスト”を作るよう勧める。溺れる者が掴むワラのごとき、「漂流者のリスト」だという。明日羽は岸辺にたどり着けるのか?そこで、何を見つけるのか?ささやかだけれど、確かにそこでキラキラと輝いている、大切なもの。読めば世界が色づきはじめる…“宮下マジック”にハマる人続出中。
著者等紹介
宮下奈都[ミヤシタナツ]
1967年、福井県出身。2004年「静かな雨」で文学界新人賞佳作に入選(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風眠
295
人生は思うようにいかないこともあるけれど、明日、自分がしあわせになるためのリストを作ったり、おいしいごはんを食べてみたり。そんなふうに悲しみから立ち直っていく主人公の心の振り子が、とてもリアルに感じられる小説だった。破談になり、失意のうちに一人暮らしを始める主人公・明日羽に「毎日のご飯があなたを助ける」と言った母親の言葉が印象的だった。自分、絶好調!って時よりも、ちょっとついてないな・・・という時に読むと、ふわっと癒されそうな物語かな。2010/12/11
紫 綺
195
結婚式を目前にして婚約破棄された、三十代手前のOL明日羽。回りの人々に支えられながらの自分捜し、再生への物語。太陽のパスタは要らんが、豆のスープは是非とも味わいたい。2016/02/07
おかむー
153
なんだろうねこのやわらかさは?『よくできました』。婚約破棄されて自身喪失茫然自失、どん底からじぶんの価値、存在意義に悩み七転八倒しながら少しづつ立ち直ってゆく主人公あすわの姿が、「ワタシかわいそう」にならずになんだかとぼけてなんだかほのぼのと微笑ましいのは、ロッカさんに象徴されるどこがズレながらもあすわを見守るまわりのひとびとの空気のおかげだろうか。冒頭で味も食感もわからなくなった食事に始まって、要所要所での料理や食べ物の描写があすわの心のバロメーターになっているところがこのタイトルにしっくりくるね。2014/09/16
文庫フリーク@灯れ松明の火
140
♪片手にピストル 心に花束 唇に火の酒 背中に人生を ああ、ああ、あああーいい本読んだー。どうしようも無く落ち込んだ時、なまじ自己啓発本読むより前向きになれる気がします。「やりたいことや楽しそうなこと、欲しいもの、全部書き出してごらん」伯母のロッカさんが傷心の明日羽に書き出させたのは、自分自身すら見えなくなって、すがるものさえ無い漂流者の指針となるドリフターズリスト。しぶしぶ書かされたリストから、それまで見えなかった色々なことに気付き、自然と自分を見つめ直して行く明日羽。こうありたいと願うリストは2012/04/25
nyanco
122
宮下作品によく登場するのが『豆』、缶詰の豆ではない一晩水につけて戻した豆を煮る、あの匂い、弱火でコトコトと煮る時間、あの優しさが宮下作品、そのものだと感じる。とっぴな叔母さんロッカさんと明日羽の暮らしぶりが楽しい。そして、他の周囲の人々も、とても良い。幼馴染・京ちゃん、同僚であり友達の郁ちゃん、弟・安彦。やはり豆のようなほっこりと温かい物語でした。私も豆を煮たくなりました。2010/02/08