出版社内容情報
アジアの「土地」をテーマにした幻想短編集。チベットの僧院で、少年僧が土地と経典の歴史に触れる「そしてまた文字を記していると」、京都の大学で日本と海外の留学生の視点が交わる「国際友誼」など、全5編。
谷崎 由依[タニザキユイ]
著・文・その他
内容説明
はるかな歴史を持つ僧院で、少年僧が言葉の深淵に触れる「…そしてまた文字を記していると」、雨降る集落でひっそり交わされる人々の営みを描く「Jiufenの村は九つぶん」、熱帯雨林にそびえる巨樹であった過去を持つ男の物語「天蓋歩行」など、言葉の魔力に酔いしれる幻想譚、全五編。
著者等紹介
谷崎由依[タニザキユイ]
1978年、福井県生まれ。京都大学大学院文学研究科修士課程修了。2007年「舞い落ちる村」で第一〇四回文學界新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
396
5つの短篇から成る作品集。物語の地に選ばれたのは、いずれもアジアの各地であり、タイトルの『鏡のなかのアジア』は、作品全体を表象するもの。作家によって新たに紡ぎだされた神話伝承といった趣きだが、巻頭のチベットこそは極寒の乾燥の地だが、他の3篇は湿潤の南アジアである。そして、中間に置かれた「国際友誼」はそれらの出発点にして結節点といった位置づけだろう。谷崎由依は初読だが、私には円城塔の小説を連想させる。文体や表現が似ているというのではない。おそらくは、彼らの小説世界が読者に対して開かれるというよりも⇒2021/01/03
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
77
☆5.0 谷崎由依の奏でるメロディが死者の闇の記憶や亜細亜の土地の遥か上空を、自由自在な面持ちで色鮮やかに重力無視で浮遊する。聞き覚えのない言語や音階に擬態を繰り返し 圧倒的な浪漫を形造り酩酊状態へといざなう。これには日本語が“谷崎由依語”に翻訳された物語が存在する。 2020/12/12
いたろう
68
アジアの5つの街を舞台にした5つの短編。それは、具体的な地名が掲げられながら、その土地の物語というより、その土地から想起される異世界の物語。鏡に映った幻想のアジア。めくるめくイメージの奔走、選びぬかれた言の葉、アルファベットで記され、視覚に飛び込んでくる擬音語<オノマトペ>。物語に酔うとはこういうことか。そんな中、京都を舞台に京大生と思しき学生たちの滑稽な姿が描かれる「国際友誼」だけが異質。京大生ということもあり、ちょっとモリミーっぽいと思ったら、もしかして、谷崎さんとモリミーって、京大で同じ学年だった?2019/06/10
いちろく
44
タイトルの通りアジアの各所を舞台にした短編集。長嶋有さんの作品みたいに日常の一コマを切りとった様な独特の描写でもなければ、江國香織さんの作品の様な作中に設定された登場人物の個性が凄く反映された描写とも異なる。現在から過去と邂逅した様な独特な情景描写に入り込む世界観と感じた。表現そのモノを楽しむ様な、文章のリズムを楽しむ様な。考えるな!感じろ!がピッタリな。 2018/10/25
信兵衛
27
幻想的というより、何とも言えない浮揚感、非現実であるのにあたかも現実であるかのような肌触りに魅入らせられてしまう感じがあります。2018/08/02