出版社内容情報
リービ英雄 日野啓三 小林紀晴 宮内勝典 谷川俊太郎 三枝昂之 池澤夏樹 米原万里 小田実 平野啓一郎 重松清 辺見庸 島田雅彦 シリン・ネザマフィ 高橋敏夫 美輪明宏
内容説明
2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロは、戦争の形態を一変させた。9・11事件に象徴される新しい戦争の姿を、現代の作家たちが描き出す。リービ英雄「千々にくだけて」、宮内勝典「ポスト9・11」、池澤夏樹「イラクの小さな橋を渡って」、米原万里「バグダッドの靴磨き」、岡田利規の戯曲「三月の5日間」、平野啓一郎「義足」、重松清「ナイフ」、シリン・ネザマフィ「サラム」他。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
64
9.11、それ以降の戦争を受けて執筆された小説やルポルタージュ、戯曲や詩、川柳までもが収められている。そのため、当時の空気感がダイレクトに伝わってきて、貴重な資料集となっている。概観しただけでも、当時私は何も見えていなかったことがよく理解できて、とてもつらかった。日本は、傍観者であり、当時に間接的な加害者でもあったという事実に、真正面から向き合えた人はごく少数なのではないか。今もあの戦争の余波は、日本より遠く離れたどこかで渦巻いている。2019/10/10
まるほ
34
この本に含まれている『バクダッドの靴磨き』(米原万里)という作品を現代文の授業で取り上げたところなかなか衝撃的だったので読んでみて、と娘から勧められ、とりあえずこの作品のみ読んでみました。▼湾岸戦争後の現地のルポタージュ風。アフメドという名の12歳の男の子が戦争による混乱後もなんとか逞しく生きる、という感じで話は進んでいくが、ラストでこちらの思惑を180%覆す方向に…。▼作品自体も重い読後感でしたが、娘が言う衝撃とは「本作は実話風ですが、あくまでもフィクションですよ」と言い放った教師の言葉だったとか…。2022/06/05
かふ
18
9.11に直接関係はない話も含めて、個人と国家という問題を考えさせらる作品が多かった。それは単一民族が信じる国とさまざまな多民族国家からやってくる者たちの言葉の交差(戦争)は、より悲痛な叫びとなって(特にシリン・ネザマフィ『サラム』は悲痛な文学)届いてくる。戦争は多くの難民を生み出すのだ。そんなときにアフガニスタンで戦争ではなく、ダムづくりで平和を訴えた故中村哲氏を思いだす。https://note.com/aoyadokari/n/nf74d8c2836ac 2022/09/08
CTC
9
シリーズ10巻中の3は『9・11 変容する戦争』。第1章に911(01年)を据え、イラク戦争だけでなく湾岸戦争(90年)を含め時系列が混じる形で収録する2章、それ以外の各地の紛争を題材にする3章、そして「1〜3章の戦中期に日本で生起した種々の“戦争”をえがく」4章の構成。当シリーズは単に“戦争文学”を集めるのでなく“戦争×文学”であるのは理解しているが…小説家のお遊びみたいな作品と人の生き死にを題材にした作品とを並べるのは勇気のいる編集作業だったろう。精神の死、というのも死には違いないだろうけれども。2019/10/25
みわごん
1
どのお話も切ない。戦争に希望などない。 後味が悪いし、胸が締め付けられる。でも、それが現実ってことだと思う。2019/11/06