出版社内容情報
フィンランド警察の特殊部隊を指揮するカリ・ヴァーラ警部。政治家の暗殺、富豪の息子の誘拐、麻薬組織との抗争…さらにカリ自身にも異変が起こる。人気極寒警察シリーズ第3弾!(解説/北上次郎)
内容説明
フィンランド国家捜査局で特殊部隊を指揮するカリ・ヴァーラ警部は、術後の後遺症にもめげず超法規的に麻薬を取締まる日々を送っていた。ある日、移民擁護派の政治家が殺害され、頭部が移民組織に届く事件が起こる。それを契機に報復殺人が続発。不穏な空気が急速にフィンランドを襲う。そんな中、謎の男がカリの前に現れた。果たして彼は敵か、それとも…?北欧社会の闇を描く、極寒ミステリ第3弾!
著者等紹介
トンプソン,ジェイムズ[トンプソン,ジェイムズ] [Thompson,James]
1964年アメリカ生まれ。2009年に発表した『極夜 カーモス』ではエドガー賞やアンソニー賞などの新人賞にノミネートされ、注目を浴びる。ヘルシンキ大学でフィンランド語を学び、英語文献学の修士号を取得。2014年8月に死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
131
これほど巻を重ねるごとに主人公と彼を取り巻く環境が劇的に変化するシリーズも珍しい。第1作のカリ・ヴァーラは田舎の警察署長だったが、第2作では首都ヘルシンキの警察署ヴェテラン警察官。そして3作目の本書ではは国家権力の傘の下で強奪と暴力も辞さない、アンタッチャブルな班を率いる指揮官となり、正義の旗印の下で次々と麻薬組織やロシアマフィアからから大金をせしめ、死体の山を生み出し、次から次へと悪徳の奈落へと堕ちていく様が描かれる。これまで以上に凄惨なシーンのオンパレードだ。本書はいわば壊れていく物語だった。2021/03/03
ケイ
119
カリのケイトに対する気持ちが前作より明らかに冷めている。それは、作者のフィンランドに対する諦念の表れだろうか。最初に出てくるレイシスムの描写がいやに生々しい。北欧は、積極的に難民を受け入れ、黒人の数も意外と多い。それを受け入れる度量を示しながらも、心の一部では決して認めてはいない。ひいては、外国人全体に対する冷たさ(アメリカの作者に対しても)を感じていたものだと思うが、フィンランドにおける差別感情の爆発がついに表面に出てきた時期に、これを書いたのだろう。描かれた犯罪そのものよりも、それを強く感じた。2016/01/18
ナミのママ
73
〈カリ・ヴァーラ警部シリーズ〉3作目。国家警察長官直属の特殊部隊に転属となったカリ。序盤は前作までの流れの説明とカリの手術の話で退屈。しかし2012年当時のフィンランドの政治、特に移民問題は面白い。出生率が下がり、移民が増える、国の文化の危機と治安悪化、まさに今の日本、北関東じゃないか。EU離脱・NATO加盟問題などの話題も登場。このシリーズ、3冊目からはガラッと変わりノワール作品になると聞いていたが確かにすごい変化。多少理屈っぽくなったとも感じるが、フィンランドの内情がわかり、これはこれで面白い。2024/03/03
巨峰
73
緊迫の前半の後、中盤以降が凄く中だるみするなぁと思ったら、終盤はげろげろな展開。えぐかった。「太陽を盗んだ男」みたいです。フィンランド人の特徴は日本人と似ている気がします。他人ごとではない。2019/04/04
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
30
フィンランドで麻薬、人身売買などの犯罪組織に、超法規的に捜査するヴァーラ警部。フィンランドの政治家、警察、犯罪組織の固い固いつながりなど、意欲的な作品だが、こんなにたくさんの武器がなぜ必要か、というくらい、ものすごい性能の武器が出てくる出てくる。武器マニアが読んだらさぞかし面白いだろう。自分はそこはとばして読んだけど。それに後書きまで書いているトンプソン氏は不慮の事故で亡くなったそうだが、どういう事故だったのだろう。調べてみても調べ方が悪いのかわからなかった。英語も読めないしね。まだ若いのに残念である。2015/11/29