内容説明
冷たい雨の降る一月のある午後、夫に死に別れたパルフリー夫人は、余生を過ごすため、クレアモントホテルに投宿した。そこにはすでに同様の長期滞在客がいた。すぐ物忘れする人、エキセントリックな人、ホテルの定食メニューに異常な関心を示す人たち。愛し、愛されることから遠くなり、退屈な日々を過ごしている。そんなある日、夫人は、若く貧しい、ハンサムな青年に出会い、恋をする。
著者等紹介
テイラー,エリザベス[テイラー,エリザベス][Taylor,Elizabeth]
1912~1975。英国レディング出身。英国の中流階級を鋭い観察眼と流麗な文章で描いた11篇の長篇があり、20世紀のジェイン・オースティンと呼ばれる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こばまり
35
ホテル暮らしといえば聞こえはいいが、要はサ高住状態である。映画「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」もよかったが、こちらの方が余程しょぼくれてて胸に迫る。15年前に読んだ時よりもずっとしみじみと。なんてことだ、私は老いたのだ。2025/02/18
ばう
18
★★テレビで偶然見た映画が良かったので原作に興味を持って図書館で借りてきたけれど、映画とはちょっと違う雰囲気でした。でもこれはこれで面白かった。映画ではあまり語られない「老い」とはいかなるものか?という点がとてもリアルに伝わってきます。「年をとると人生は受け取るばかりで与えることはなくなる」とか、「年をとると誰にも名前で呼ばれなくなる」とか、ああ、成る程その通りかもしれないと思います。国は違えど、老いは同じ様にやってきているんだと、当たり前の事だけれど改めて気づかされました。読んで良かった。2014/12/24
paluko
15
「ホテル生活」というと日本では何やらリッチな印象があるけれど(自分だけ?)本書で描かれるのはホテルの安い部屋を長期で契約して滞在する、戸建てで自力生活するのはもう難しいけれど、養護施設にはまだ入りたくない…という人々(主に女性)のリアルな日々。家族・縁者が訪問してくる者は羨まれ多少得意になれる。そんな中、主人公のパルフリー夫人は偶然、知り合った赤の他人を自分の孫だと偽ってしまい…英国の食事情が侘しい老年生活をより寒々しく彩ってくれます。2023/07/14
きりぱい
12
あのエリザベス・テイラーならぬ、このエリザベス・テイラーは知らなかったのだけど、20世紀のジェイン・オースティンと呼ばれているそうで、へえ!へえ!と、私的な喜びはさておき、物語はとてもよかった。クレアモントホテルに余生を過ごしに来たパルフリー夫人と、そこに長期滞在する老人たちとの交流。小さな嘘がもたらした思いがけず至福の時間は、心をポッと温かくさせながら、老いの現実へのシニカルな目線も外さない。ただ心地よくしっとりと読ませる。読んだ後に映画の予告編を観ると泣けてきます。2010/10/22
しい☆
9
エリザベス·テイラー初読み。あまい夢物語みたいな本を想定してたらぜんぜんちがった。人生の終わりを身近に感じるようになったいま、読めて良かったかな。2019/05/29