集英社文庫
夷狄を待ちながら

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  • サイズ 文庫判/ページ数 360p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784087604528
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

静かな辺境の町に、二十数年ものあいだ民政官を勤めてきた初老の男「私」がいる。暇なときには町はずれの遺跡を発掘している。そこへ首都から、帝国の「寝ずの番」を任ずる第三局のジョル大佐がやってくる。彼がもたらしたのは、夷狄(野蛮人)が攻めてくるという噂と、凄惨な拷問であった。「私」は拷問を受けて両足が捻れた夷狄の少女に魅入られ身辺に置くが、やがて「私」も夷狄と通じていると疑いをかけられ拷問に…。

著者等紹介

クッツェー,J.M.[クッツェー,J.M.][Coetzee,J.M.]
1940‐。南アフリカのケープ州生まれ。両親ともアフリカーナ(オランダ系移民の子孫)。父は弁護士、母は教師。ケープタウン大学で英文学・数学の学士号取得。卒業後英国でコンピュータ・プログラマーとして働き、のちテキサス大学で英文学の博士号取得(69年)。71年帰国後、母校で英米文学を教え、最初の小説『ダスクランド』(74年)を発表。『マイケル・K』(83年)、『恥辱』(2000年)でブッカー賞史上初の2度受賞を果たす。2003年度ノーベル文学賞受賞
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感想・レビュー

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ヴェネツィア

316
ベケット(タイトルのせいもあるが、あながちそうばかりでもなく)、あるいはカフカの例えば『城』を想起させる。そうでありながらも、なお決定的に違うのは、ベケットやカフカにおいては、この世界の向こう側にいるもの(たとえゴドーという名がついていても)は、とうとう最後まで不条理世界のそれであり、実態は不明のままだった。ところが、クッツェーのこの世界での夷狄は、少なくても語り手である「私」にとっては確かな実態を持っていた。むしろ、辺縁に夷狄を配することで、帝国そのものが不可解で実態不明なるものに異化されるのである。2016/03/24

遥かなる想い

197
一言で言うならば、暴力と 告白と官能の文学とでも言うのだろうか。 私と両足が捻れた少女との 交流は不可思議で、ひどく 艶かしくまるで南アフリカ版谷崎潤一郎の世界だが… 背後にある「拷問」の 世界が正直怖い。 ジョル大佐による拷問と 女たちとの官能の世界…どこからが 現実でどこからが妄想の 世界なのか…繰り返される 官能の描写で著者は何を 描こうとしているのか…夷狄とは何を意味しているのか… 煙に巻かれた展開だが、 巻き込まれる恐怖は充分 感じた、そんな物語だった。2015/12/19

ケイ

140
帝国の人々は、本来その土地に住むべき者ではない。帝国領を一歩出れば、砂漠で生きる術を持たない。根付いて生きているのは、夷狄や漁民たち。だから彼らを怖れるのは、故あってのことだ。畏れが拷問を生み出す。痛め付けることでは恐怖はおさまらず、夷狄そのものを潰そうと思っても、倒れるのは自分達だ。身体を決定的に傷めてしまった少女に、民政官は何を見たのだろう。2016/03/11

藤月はな(灯れ松明の火)

103
民政官ながら政治にはできるだけ、関わらず、歴史的建築物を発掘して隠居生活を待つ主人公。しかし、夷狄襲撃への噂と封じ込めによる警察官の拷問を知ったことから足を潰され、盲目にされた夷狄の娘を助けるが・・・。しかし、主人公の娘への献身は自己陶酔的なものが鼻につきます。娘による意思があまり、透けて見えないからかもしれませんが。そして『ゴドーを待ちながら』のように最後まで夷狄は来ない。なのに未来の予感に対する恐れだけが人々の残虐さを解放させていく。必要悪としての、見て見ぬふりの残虐は新たな脅威を産む不毛さ2017/06/27

どんぐり

103
辺境の町で帝国に仕える公僕の地方民政官の「私」。平穏な時代に平穏な生活を送ること以外求めてこなかった人生、退官の日が近い。文明というものが帝国を成し、その周辺では必然的に夷狄がつくられ、他者に従属する民族を生み出す。内なる帝国、外なる夷狄。ある日、町中で物乞いをしている夷狄の女をみかけた「私」は、その女を救い身辺に置くことになる。行政官として「私」が20年間戦ってきた相手は夷狄に対する侮蔑だったが、夷狄と通じていると疑いをかけられた「私」は、拷問を受けることになる…。辺境の町が塩害に侵され朽ち果てたとき、2015/08/01

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