内容説明
胸を病み憂鬱な心をかかえて街を浮浪していた「私」は、ふと足を停めた果物屋で檸檬を買った。その冷たさと香りは、突然「私」を幸福感で満たし…。自らも病に苦しみながら、透明感あふれる珠玉の作品を遺した著者の、代表作「檸檬」ほか12編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネジ
38
★★★★★ 大正末期から昭和初期にかけて、結核に犯された青年である著者によって描かれた作品。当時、結核は確実に死に至る病であった。著者の自然や情景に対する感覚と思索は、死を身近に感じていた故に研ぎ澄まされていったという。特に、『檸檬』と『桜の樹の下には』からは、外界は不変であっても自らの心が変わることで見え方が変わっていく様子が鮮明かつ清澄に描かれており圧巻であった。2023/12/28
ナチュラ
27
本作品は13話の短編を収録。 どの作品も、じっくり読まないと頭に入ってこない。 全体に内容が暗く、淡々としている。しかし、描写の中に含まれる感情がとても深い(と思う)。彼は31歳の若さで肺結核で亡くなっている。彼の心境を想いながら、また再読したい。2017/03/15
まめ@暫くイン率落ちます
24
【新潮文庫の100冊】新潮文庫イベントですがブックオフであったので購入、集英社文庫で読了。本人は結核を患っていた為か、短編集どの作品もとても暗くて読んだ後気持ちがどんよりとなりました。表題の檸檬は高村光太郎の智恵子抄を思い出しましたね。作品から見ても梶井基次郎がいかに病床で苦しんでいたことか、その光景がありありと目前に映し出されるようでした。2018/09/11
ネコタ
23
表題作で梶井基次郎の代表作である「檸檬」ほか12編を収載。檸檬は何回読んだか分からないけど、何回読んでもよく分からない。「桜の樹の下には」も何回か読んだ。どの話も難しい。話の内容も難しいし、感じも難しい。語注がものすごい多い。2016/08/09
ちょん
22
普段なかなか読まない系。表紙が大好きな山口マオさんだったので買って積んでいたのを手に取りました。独特な古典の雰囲気に慣れないまま四苦八苦しながら読みましたが「桜の樹の下には」「愛撫」は好き、読みやすく頭にするんと入ってきました。愛撫は猫の話ですがおもしろ怖い、でもこの作者の感覚…分かってしまうような気がする✨2020/10/05