集英社文庫<br> あの夕陽

集英社文庫
あの夕陽

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  • サイズ 文庫判/ページ数 234p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784087507164
  • NDC分類 913.6

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

メタボン

38
☆☆☆ 文体は好きだがあまりにも何も起きない物語が多く、正直面白くなかった。思いを残している土地の変容、というテーマが多い気がする。「あの夕陽」おとなしく従順な妻の不気味な反抗。「赤い月」朝鮮人の前で土下座しアスファルトにたまる血だまり。「蛇のいた場所」癌でなくなった知人の女性と抱き合った記憶に重なる二匹の蛇のからまり。「黒い水」魔性のような黒い渦に飲み込まれそうになる。「雪女」東北の情景とそれに合う地元の女性をモデルに雪女を撮る。「果ての谷」カッパドキアの幻想的な風景。これは小川国夫っぽかった。2017/04/19

大粒まろん

21
読み易くて、なんだか面白く読みました。気怠げで断片的、寂寞とした文体。何事にも投げやりな私は、妻令子にも興味がないまま3年も過ごしている。その間、特派員として派遣されたソウルで出会った闊達な女性との秘め事をそのままにして日本に帰って来ていた。。妻令子がそれに気づいている事がわかってからの主人公の描写は怪しくて愚かしくてジリジリしている。非常にだらしない男の、この普遍的なテーマは地味でありきたりなようですが、描写力と筆運びで読ませてしまうところは、良いと思った。2023/09/25

kanako

3
安心な日常にふと垣間見える非日常、幻想を、作者自身の原風景である戦後の荒廃、朝鮮での暮らしを絡めて描く・・・のだけど、個人的に文章が大好き。2010/10/17

織沢

2
単身赴任で韓国へ赴き、ガールフレンドを作って戻ったら妻に嫉妬され…と筋を並べると如何にも詰まらない小説だが、この芥川賞受賞作の根本はそこではない。夫は戦前の朝鮮に育ち、敗戦後引き揚げて田舎の屋敷に住んでいた。一方妻は戦前の東京下町に育った江戸っ子で、戦争によってルーツを尽く破壊され、実家さえない。この二人の対比の内に、戦争とは、戦後とは何だったかを描き出した作品だった。ルーツへの憧憬(ノスタルジー)は夫婦に共通しているけれど、そこへ戻れる夫と決して戻れない妻の関係は、戦争の不条理?身勝手さを感じさせる。2021/07/31

tenchi

2
「あの夕陽」、自分には何とも後味が悪いというか、心が重りを飲み込んだような暗く澱んだ印象でした。この夫婦に果たして「愛」はあったのか、あったとすればあまりに虚しい。瓦解した夫婦関係とはそんなものかもしれませんが、そんな哀しい愛の形が、形にもならない心のあり様が幾重にも重なる作品集です。「黒い水」の中に「人間なんてどうせ愛し合えるものではない、ということを暗黙のうちに了解し合う愛」という一文が出てきますが、誰もが感じたことがありながら尚認めたくない、この作品集全体を象徴するような怖しい言葉だと思いました。2016/10/13

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