内容説明
名古屋から東京へすすむ木田が再会した教え子たちはそれぞれが元の仕事を離れスナックの見習い、人形販売員、芸能プロの事務員、遊園地のアルバイトとして懸命に生きていた。娘も元気でいるのを知るが、うめ子だけは不幸な人生を急ぎ、すでに、この世の人ではなかった…。自然破壊の田舎と虚栄の都会の間に浮び上る教育、職業、男と女と金、原発など現代社会の歪みを問う。
感想・レビュー
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桜もち 太郎
15
敦賀で教師を退職した木田は、集団就職をし行方をくらませた5人の教え子を訪ね歩く。この旅の中で彼らの必死に生きる姿を見た。しかし、うめ子だけは借金に追われ病に侵され死んでいた。一教師としての教育の限界を感じる木田の苦悩は深い。「東京は地方をくいものにしているんですよ」との清美の言葉はうめ子の死にざまを表現している。人間模様を描くと同時に原発銀座と呼ばれる若狭地方の現状も描かれている。原発反対派にしろ原発の恩恵にあずかっている社会の歪みは今も変わらない。教育、人生、故郷、原発、多くのテーマが読み取れた良作。2021/09/25