内容説明
日露戦争開戦前夜の北京。清国と露国との秘密協定の情報を得るために日本は巨額の工作費を用意して、清国要人買収に乗り出した。骨董商の土井策太郎は密命を帯び、拓本家の文保泰の工房「悠々館」を訪ねた。文は清国の最高権力者西太后につながっていた。だが大金を渡した直後、文は密室になった悠々館で殺された。激動の清国末期を舞台にした傑作歴史推理小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
エドワード
17
日露戦争前夜の北京。美術商の土井策太郎は、拓本家の文保泰を訪ねる。漢字の国らしい拓本という技芸の裏に、清朝政府高官につながる顔を持つ文保泰。ロシアとの政争に駆り出された土井が文保泰に二十五万円の賄賂を渡した直後、彼は仕事場である悠悠館で殺され、二十五万円も忽然と消える。出入口がひとつしか無い石造りの館、固く降りた閂。完璧な密室殺人だ。怪しいのは、女中の芳蘭。清朝末期の北京の政治体制や、満州人と漢民族のいがみあいなどの描写は初めて読むものだ。殺人の謎解きの裏に隠された、日中間の人間模様が興味深い。2015/07/27
Tanaka9999
5
日露戦争前夜の清をめぐる裏工作。清の大官への賄賂資金を中継役の人が殺されお金が奪われる。途中で少しずつ謎が明かされてくる。最後の少しのどんでん返しあり。私にとっては少し意外だった。が、よく考えてみるとそのとおりなんだよなぁ。2018/12/23
はち
2
舞台は清朝の末期、日露戦争直前の北京。主人公は日本とロシアの諜報戦に巻き込まれ、不思議な事件に遭遇します。ミステリーの要素より、歴史小説の色彩のほうが強いですが、ミステリーとしても楽しめるストーリでした。2013/10/04
影実
1
日露戦争直前の中国の雰囲気がよく伝わってくる良作。ミステリだけではなくスパイ小説的な要素もあり、書かれた年代を感じさせない。2009/11/22
kanamori
0
☆☆☆2011/10/17