内容説明
時代は南北朝。肥前のとある浜辺に一人の男が泳ぎついた。密使だった。済州島のナミノオオは、上松浦党水軍に手を結ぼうと持ちかける。やがて両軍の後押しで、波王水軍が旗揚げされた。若き上松浦党の後継・小四郎を大将として。海を祖国を護らねばならない。熱き思いを胸に秘め、小四郎が立ちあがる。敵は、強大な元朝。そして決戦の時は、今。大海原を舞台に描かれる北方歴史ハードボイルドの会心作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
24
海戦の迫力と登場人物たちの清々しさが印象に残る一冊でした。中盤以降どんどん面白くなりました。2024/03/25
TheWho
15
元朝末期に起りえた第三次元寇を阻止すべく、大国元に戦いを挑んだ水軍上松浦党の後裔で架空の首魁である「波王」を主人公に東シナ海で繰り広げられた倭寇と呼ばれた日本水軍と元朝水軍との海戦記。時代は南北朝、高麗済州島の水軍が上松浦党に接触する所から始まり、波王水軍の創設、そして著者が後に書く中国沿岸部に隠れ住む藤原純友の末裔を巻き込みながら壮大な海の物語へと展開していく。海音寺潮五郎の「海と風と虹」に始まる日本の海の史劇を綿々と受け継ぐ壮麗な一冊です。2014/11/16
Mzo
14
北方太平記の掉尾を飾る一作。とはいえ、南北朝の馴染の人物の登場は皆無で、ほぼ創作。時代だけ借りて、海の上で繰り広げられる熱い漢の物語、というある意味いつもの北方節。十分に面白いんだけど、三国志、楊家将、水滸伝という後の作品の方がのめり込み度は高いかな。主人公だけでなく敵方も魅力的に描き出すようになったことが、その差になっているのかもね。2016/10/31
hoiminsakura
12
前半は状況説明的で、地理や人物の特徴を覚えるので精一杯だったが、次第に状況が見えてくると事情がのみ込め、緊迫感が増した。元が2度と日本に攻めてこない為の海の男達の戦いを描くが、朱元璋が元を倒し明を建てる戦いに波王小太郎の半生を絡ませることで、重みが増す。犠牲も多い最後の戦闘シーンは、短いフレーズで息をもつかせぬ緊張感が現実味を帯びて一気に読んだ。多くを学び、得、失った小太郎が選んだ道は清々しい。北方謙三の描く男達はここでもやたら格好よかった😃。2021/04/15
浦
12
第三の元寇を防ぐため、九州の松浦党から出た波王水軍が戦いを挑む。中盤までは期待に叶った展開、後半はそれを超える大展開!次も読むぞ。2018/03/16