内容説明
悲壮美漂う、荒涼たるダートムアの夕暮れ。鱒釣りに来たロンドン警視庁の刑事ブレンドンは、燃え立つような赤い髪をした美しい娘に心を奪われる。その名はジェニー。まもなくブレンドンは、彼女の一族、レドメイン家をめぐる奇怪な殺人事件に巻き込まれて行く…。容疑者の赤毛の大男を追ってイングランドからイタリア、コモ湖畔へ。万華鏡のような絢爛たる色彩、重層的な謎。乱歩が心酔した最高傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
セウテス
42
江戸川乱歩氏が感化され『緑衣の鬼』を書き、クリスティが作家として一人立ちするまでアドバイスをした人物、それがこのE・フィルポッツ氏です。この作品は比較的早い段階で犯人の目星はついてしまうのですが、実はそれは計算されたプログラムであり、その上で読者が犯人と思っている人物と、探偵側の間に起こる愛疑まみれた暗陰とした心の葛藤を、彼らを取り巻く人びとの思い入れと、美しい自然背景の描写にて書き上げた作品です。『罪と罰』をミステリーとも感じる人には評価は高いと思いますが、純粋に謎解きを求める人にはおすすめしません。2014/07/11
kasim
31
ダートムアを舞台にした作品を探して数年前にたどり着いた。夕暮れのダートムアですれ違った赤毛の美人のために人生がひっくり返ってしまう腕利き刑事と、赤毛のレドメイン一族に次々と迫る危険。いわゆる「黄金時代」のミステリにそれほど詳しいわけではないけれど、本作だと一般小説のようにも読める感じ。ゆるいコリンズのよう。冒頭の出会いの場面の絵画的で印象的な描写が、作品の力の根源になっているような気がする。2021/11/29
ソルト佐藤
12
風光明媚な田園風景なんかが楽しく。ちょっと古びた感があるけれどなかなか面白い展開。ただ、あまりにも探偵役が間抜けというかなんとういか(笑 死体がないのことをあまり気にしなかったり、決めつけが多かったり。と、思ったら、物語中盤で真の探偵が登場。まずこれにびっくり(笑 話としては、異常者と思われる赤毛の男が随所にでてきてホラーというかスリラーというか、そういう感じ。乱歩が好きだったのはこのへんなのかな?2019/08/09
背古巣
10
「乱歩が一番愛したミステリー」ということで読みましたが、期待よりはちょっと落ちるかな?というレベルでした。前半は主人公と思われる人の感情の記述が多く、事件発生とそれに続く捜査についてだらだらと書かれている感じです。物語の展開上必要なことなのでしょうけど、一気に読むというわけにいかず、前半だけで半月ぐらいかかりました。後半はだんだん事件の真相がわかってきて面白くなり、最後は「こうきたか!」という内容でした。作者は主人公に対して好意的に書いていますが、わたくしは読んでいてずっと腹を立てて読んでいました。2015/04/18
barcarola
5
一昔前の「ミステリベスト10」の類では、まず常連であった本作。少々古さを感じてはしまうものの、期待通りではあった。なぜだろう、犯人が妙に魅力的に映る。2015/12/05