内容説明
江戸時代に組織された瞽女集団の最後の一人、人間国宝・小林ハル。三味線ひとつで各地を渡り歩き、唄を披露して報酬を得た盲目の旅芸人である。1900年に生まれ、生後間もなく失明した彼女は、6歳で瞽女に弟子入りし、厳しい修業に耐え、不屈の精神で瞽女唄の第一人者となった―。光なき世界で極めた芸と20世紀の生き証人ともいえる生涯を綿密な取材をもとに描くノンフィクション。
目次
第1章 光を知らない娘(妙音講;最後の弟子 ほか)
第2章 定めの中で生きる(戒律;挫折 ほか)
第3章 報われぬ愛情(高瀬;長岡へ ほか)
第4章 冬から春へ(モデル;あやめ寮 ほか)
著者等紹介
下重暁子[シモジュウアキコ]
1959年、早稲田大学を卒業。NHKアナウンサーとして活躍後、エッセイ、評論、ノンフィクションなど、文筆活動に入る
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感想・レビュー
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Willie the Wildcat
77
無形文化財の瞽女伝承者。ネットで女史を知り、本著を手に取った。母の物心両面での厳しい教えは、愛情の裏返し。時勢もあり、是非の問題ではない。師匠や弟子、そして親類にも、時に裏切られる心。唄うことも、唄そのものにも、好き嫌いはないと明言する心底。この”こなす”心に芸術は無く、生活。但し、結果論としての芸術。故に印象的なのが、普段は何事も唯々受け入れる女史が、無形文化財認定後の他者の豹変ぶりに対して見せた怒りの感情。意地。”復活”したのは、伝承者としての使命感と推察。読後YouTubeで、小林女史の唄も拝聴。2020/04/28
じゅき
41
越後で最後まで活躍した長岡瞽女小林ハルさんの資料があるのはわかっていたけど未読でした。ハルさんことが知りたくて手にした1冊。生まれてからのノンフィクション。・・ハルさんのお母様がこの先の人生を見すえ厳しく育てられた様、様々な苦行・試練 口に出さず全てを受け入れる。その心の奥を思うと胸が熱くなりました。『いい人とと歩けば祭り、悪い人と歩けば修行』・『普通の時やるのはあたりまえ、難儀なときにやるのが本当の仕事』沁みました。ハルさんが生きている間に歌声を聞いてみたかった その空気を感じてみたかったです。2015/03/05
shizuka
30
生後まもなく失明。女性が一人で生きて行くのは難しい時代。しかも盲目となると尚更。親の愛で瞽女の修行に出される。齢たった5歳。そこからハルさんの壮絶な人生が始まる。舞台は北陸。家々をまわり三味線と唄を披露していくばくかのお金を貰う。縁起物ではあるので決して忌み嫌われるわけではないが、弱視瞽女を先導に、盲目の瞽女たちがお互いの紐をたよりに連なり歩いて行く様は、やはり人の目を引く光景であったと思う。ハルさんはとても強い。時に挫けそうになったら、ハルさんを思い出す。ハルさんのまっすぐな強さは、現代の光になりうる。2015/11/19
ann
24
夫が新潟県上越市出身で、帰省した折立ち寄った酒屋さんの店先に、「瞽女さんMAP」がおいてあり、初めてその存在を知りました。町おこしに瞽女さんの歴史が一役買っているようでした。 小林ハルさんの一生、その他の数多の瞽女さんの一生。何の苦労もせず、楽な方へ流されがちな私に無言の喝を入れられたようです。幼いハルさんに厳しく躾をする母の気持ちが痛いほど伝わります。機会があれば一読をお勧めします。2015/03/10
まーさん
17
過酷な環境下で人に頼ることなく、逆に弟子などには親切で、自律した生き方には頭が下がる。地元の新潟弁も懐かしい。2019/09/17