内容説明
情熱。ため息。絶望…でも、やっぱりまた誰かを好きになってしまう!恋愛は世界を循環するエネルギー。日常というフィールドを舞台に、かろやかに、大胆に、きょうも恋をする女たち。主婦。フラワーショップのオーナー、モデル、OL、編集者…etc.9人の女性たちの恋と、愛と、情事とを、ソフィスティケイトされたタッチで描く「恋愛運動小説」。
著者等紹介
江国香織[エクニカオリ]
1964年東京生まれ。目白学園女子短期大学卒業。小説、童話、エッセイ、翻訳など、幅広い分野で活躍している。2002年、短編集『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で第十五回山本周五郎賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
476
9人の女たちそれぞれの日常と恋を描く。視点が目まぐるしく変わるのだが、そこにこそ本書の特質と小説としての面白さがあるだろう。しかも、それぞれの恋は概ねそれとは知らずに微妙に錯綜したりもしている。そこがまたいいのだが。ただ、男である自分から見れば、どうして土屋があれほどモテるのか理解に苦しむところだ。また、慎一にしてもしかり。つまるところ、登場する男たちの誰にも魅力を感じないのである。では、女はどうか。道子が言うように「みんな、いちばん愛したひととはちがう相手と一緒にいる」のであり、ひたすらに能天気な陶子⇒2019/05/20
優愛
134
「みんな、いちばん愛したひととはちがう相手と一緒にいるみたい」今一緒にいる人ももちろん愛しているけれどそれとは違う、時間の止まったままの恋がここにもう一つ。色彩の表現、何気ないティータイム、お気に入りの場所。すべてに詩のように美しい情景が見える江國さんのこの独特な世界観が好き。散りばめられた言葉の一つ一つを胸に留めておきたくなります。きっと曖昧な結末こそがこの小説を引き立てる。琵琶の様に甘く檸檬のように酸っぱい、それでいて薔薇のように美しい空気感に永遠に浸っていたい。陶子の生き方が個人的には好きですね。2015/01/23
優希
113
恋って不思議だなと思わずにはいられません。9人の女性たちの恋愛は大胆でいて様々な感情を起こさせました。日常の中に恋を落とし込み、優しく、憂うように描かれ、交錯していく恋。主人公は誰一人としていなくて、誰もが主人公でもある。その背景にある風景は時に美しい色彩を持ち、時にモノクロになるような感じがしました。さらさらと流れるような世界に入り込むのが心地よかったです。オムニバス映画を見ているような感覚になりました。2016/05/11
aoringo
93
九人の女性たちの結婚生活や恋愛について様々な角度から描いた作品。不倫、長い片思いなどあまり感情移入はできないのにすごく惹かれるのはなぜだろう。ハイソな人達のゆとりある生活に憧れているだけかな?でもうん、いつもの洗練された文章と巧みな心理描写を楽しめました。やっぱり江國さんの作品にはずれなしです!女性、男性、それぞれに個性があるからドラマになったら面白いかも。2022/09/28
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
91
【再読】最近殺人事件の話ばっかり読んでいたので心を穏やかにしたくて久しぶりに読み返し。 やっぱり何度読んでも好き。9人の女性とそのお相手と視点がころころと変わっていくのだが、夕食の買い物だとか好きなものや季節への表現なんかでその人を表現できるのが江國さん。 私は陶子が一番自分に近しく感じる。男女って最初は恋愛関係から始まるけど、その後はそれだけでは繋がらない。要は「自分」が一番幸せでいられる環境を選びとっているだけなのかも。 夫婦で感じる孤独とひとりでの孤独。私はどうせならふたりで感じたい。2018/04/17