内容説明
九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく―。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
1012
乙氏の驚異のデビュー作所収の中編集。当時週刊少年ジャンプ読者だった私はリアルタイムで乙氏のデビューを目の当たりにした。今は亡き栗原薫氏が審査員を務め、絶賛の上、強烈に推挙したのを鮮明に記憶している。その話題作を16年を経てようやく読んだ。いやあ、天才は本当に存在するんだなぁと思わされた。とても16歳が書いたとは思えない着想と文体。誰もが心に抱く風景を事細かに、しかしくどくなく適度な量で映し出す。私が読んでいた終始浮かんだのは夕焼けの色だった。そんな日常の傍らに狂気はいつも潜んでいることを教えられた。2012/11/21
青乃108号
444
最初に断っておくが、俺の手に取った本の装丁は歪んだ階段と、その先にあるやしろを描いた暗い絵の物だ。此のようなアニメ風の絵だったら決して手に取りはしなかった。そしてこの秀作を知る事は永遠になかっただろう。表題作と「優子」という短編が収録されているが、2作共、大変良く出来た作品である。乙一の作品は「暗いところで待ち合わせ」しか読んでいないのだが、デビュー作にして此のような味わいのある作品を書ける彼の筆力には恐るべきものがある。しかも何と16歳の時に書いたとは。天才か。また1人、追いかける作家が増えてしまった。2025/02/09
hit4papa
415
子供の死を扱った物語は苦手ですが、本書は読んでいてそれほど嫌な思いをしません。死んでしまった「私」が語り手になっているからか、現実感が希薄なのです。まるで隠れんぼをしている子が、オニの様子を窺っているようです。
せ~や
393
死体が主人公なのが、斬新で面白かった!置き方や環境、運ばれ方など、死体となった主人公がどのように感じるかが、事細かにではなく、まるで一言添えるように描かれてて、どこか滑稽でした。「優子」の方は、読んでいて「オチは○○だろう」と思って読んでいたら、最後の最後で騙された。話し口で「」を使わずにする技法など細かなとこで、作者さんの技が見えて、お見事でした。2017/05/10
そる
335
死人が語る物語、ってのが目新しい。ありそうでなかった感じ。この2人、早く捕まればいいのに、と思って読んでた。あまりにも飄々として隠し通す事しか考えてない。子供だからそうなのか?悪い事したら捕まらなきゃ。しかも友達だったのに。隠す過程はスリリングでした。最後の展開は分かりそうで気付けなかった、悔しい。もう一遍の「優子」も良かった。どっちの言ってることがホントなんだ?「そしてわたしに近寄りながら言った。「五月ちゃん、死んでるじゃないか。弥生、泣いてちゃ分からないだろ、何があったのか話してみなよ」」2019/08/10