出版社内容情報
背筋の凍る恐怖を繊細に描くホラー短編集
かくれんぼの途中で連れ去られ無残な姿で見つかったみっちゃん。どうやら彼女は今も鬼を続けているようで…「鬼」。表題作を始め、恐さがじわじわ迫る戦慄の作品集。文庫用に2作品追加収録。
内容説明
引きこもっていた息子が、突然元気になった。息子を苛めていた子が、転校するというのだが…「カラス、なぜ鳴く」。かくれんぼが大好きだったみっちゃん。夏休みのある日、鬼になったみっちゃんは、いつまで待っても姿をあらわさなかった。そして、古井戸から…「鬼」。他、言葉にできない不安、ふとした胸騒ぎ、じわじわと迫りくる恐怖など、日常に潜む奇妙な世界を繊細に描く10編。ベスト短編集。
著者等紹介
今邑彩[イマムラアヤ]
1955年長野県生まれ。都留文科大学英文科卒。会社勤務を経て、作家に。89年、東京創元社「鮎川哲也と13の謎」に応募し、『卍の殺人』で13番目の椅子を射止めてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソルティ
272
おもしろい。「世にも奇妙な物語」ですね。ゾワッとする所もあるけど、なぜか暖かくて嫌な気分にはならない。恐怖もあまりない。大きなひねりや、大どんでん返しもないけど話の展開はあるし、落ち着いててとても読みやすい。ストレートでわかりやすい。この方の作品はもう少し読みたいと思う。「「人は悲しみが多いほど人に優しくできるとか何とかいう歌あるじゃん。あれってウソだよね。僕、自分で経験してみて分かったんだ。人は悲しみを経験しても優しくなんかならない。狡くなるんだ。(中略)優しいふりをする狡さを身につけるんだ。」」2019/04/20
しんたろー
189
今邑さん3冊目。ホラー、本格もの風、ブラックユーモア、ファンタジー、イヤミスなど趣向を変えて10作…どれも著者らしい軽妙で流麗な語り口でスイスイ読めた。30~40ページと少ないページ数でも怪現象だけでなく心情を丁寧に織り込んであるので、ゾッとしたりジーンとしたりすることができるのが本作の良いところで、ご本人があとがきで「一番気に入っている短編集」と述べている通りにレベルが高く、暫くしてから読み返しても楽しめる「短編集の見本」とも言える良作。中でも『鬼』『黒髪』『悪夢』が切ない余韻が強く残って好みだった。2020/05/05
nobby
186
うん、良質で多様な短編10作を堪能出来て大満足。ホラーにとどまらずSF的な物まで、全て40頁弱でゾクッとオチを残すのがお見事!どの話も読みやすく展開に引き込まれていく内に、多分こうなるという予測通り「来るぞ、来るぞ、やっぱり来たぁ!」って分かりやすく楽しめて嬉しい(笑)一番のお気に入りはやっぱり標題作「鬼」かくれんぼに重ねながら迫り来る恐怖がたまらない。それで最後に「それから、すこしわらった」には脱帽。予想通りの結末ながらジワジワ震えたのは「メイ先生の薔薇」後から思えば黄薔薇39本の花束登場がもう不気味…2018/04/28
ナルピーチ
173
【鬼】の意味を調べてみると(おに)の語である(おぬ=隠)が転じたものとあり、姿の見えないもの、この世ならざるものを表す言葉らしい。日常を描いた10編の短編集はどれも陰鬱で、闇に潜む得体の知れない何かが読者を引き込んでいく。そこに見え隠れする何かを求め読み進めるも、結末を予測する事は出来ない。それは好奇心なのか。それとも恐怖からなのかもわからず頁を捲らされた。今邑彩が描くこの疑心暗鬼が蠢く世界をとくとご堪能あれ。2021/04/22
🐾Yoko Omoto🐾
158
SF、ホラー、ファンタジーなど多彩なテイストが現実の生活に奇妙で不思議な彩りを添え、ジンワリとした怖さを含む短編集。展開と落ちが想像のつくような作品が多かったが、バラエティに富んでいるのでどれも楽しめた。前半三編は非現実が介入しないミステリで、女性特有の狡猾さが巧く絡められ心理ホラー的要素が強め。マイベストは「鬼」「蒸発」「悪夢」。「蒸発」のブラックさは断然好みで、「悪夢」の夢が構築されるプロセスが興味深かった。何気に強烈に恐いのは「メイ先生の薔薇」、対照的に恐い現象を微笑ましく感じてしまうのは「黒髪」。2014/09/22