内容説明
将軍徳川秀忠の長男・竹千代の乳母として、江戸城大奥に上がったお福は、次男・国松のほうを溺愛するお江与の方、つまり江(ごう)と激しく対立。劣勢をはねのけ、竹千代は三代将軍となる。権勢並ぶ者なき存在となったお福だが、女としての幸福は、いかに!?春日局の波瀾に満ちた生きように迫る表題作ほか、伝説の歌舞伎役者・沢村田之助の半生を描いた「女形の歯」など四篇を収録。異色歴史小説集。
著者等紹介
杉本苑子[スギモトソノコ]
1925年6月26日東京生まれ。文化学院卒業。51年「申楽新記」で「サンデー毎日」懸賞小説佳作。吉川英治に師事する。62年『孤愁の岸』で第48回直木賞、77年『滝沢馬琴』で第12回吉川英治文学賞、86年『穢土荘厳』で第25回女流文学賞を受賞。87年紫綬褒章受章。2002年第50回菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しーふぉ
28
春日局…簡単に自分の手で人殺すし、死に瀕した秀忠夫人にすぐに忠長もそちらに送るみたいなことをぼそっと告げたり…猛女というか悪女というか。他の収録小説も全て面白く、他の本も読んでみたくなった。2022/11/08
佳乃
21
5編からなる短編でしたが、それぞれに思うところあり。表題作の『春日局』は色んな意味でお福が恐ろしい。2021/10/07
nabe2511
15
杉本さん初読み。短編のおかげか春日局の波乱の人生がくっきりと浮かび上がってきて読みやすかった。すべての作品から「恨」の鏡に映し出される主人公やとりまく人達の姿が怪しげに浮かび上がってきました。西條奈加さんの大先輩のような作家さん。歴史小説を数多くてがけていらっしゃるようなのでこれからも読んでみたい。2022/11/09
マツユキ
12
表題作が気になって読みました。春日局は、予想外に激しく恐ろしい女性ですが、最後まで貫いていて、圧倒されました。病で手足を失った歌舞伎役者、沢村田之助(『女形の歯』)の怒りも強烈。他には、亡き妻に似た女性に惹かれ、据えもの斬りの名人に弟子入した男(『ひとだま半之丞』)、秀吉の命を狙う朝鮮の少年(『耳塚のすみれ』)、この世は春だが口癖の男が行き着いた先(『良さ春じゃ』)。人の嫌な部分が全面に出された作品集でしたが、ここまで来ると逆にさっぱりしました。面白かったです。2023/12/15
ミナ
8
沢村田之助に興味があり「女形の歯」を目当てに購入。両手両足を失ってなお矜持を失わない田之助。しかし、物として見世物として扱われる現実に追い詰められていくところが迫力に満ちていた。「ひとだま半之丞」は壇術家、据えもの斬りとなった半之丞の話。試し斬りを生業とする人の話というのが物珍しかった。2018/02/18