内容説明
江戸の夏。両国川開きのこの日、花火見物に出掛けた元北町奉行所定町廻り同心・小山田采女と妻のおしゅんは雑踏の中でスリに遭遇する。残された財布の中には、奇怪な脅し文が入っていた。どうやら財布の持ち主の娘がさらわれたらしい。だが手掛かりはこの紙片一枚のみ。采女はさっそく仲間と共に探索に乗り出すが―。移ろう季節の中、市井の人々の生活を活写しつつ展開する書き下ろし時代小説。
著者等紹介
花家圭太郎[ハナヤケイタロウ]
1946年秋田県生まれ。明治大学文学部仏文科卒業。フリーライターとして活躍後、ユニークなキャラクター戸沢小十郎を造り、98年『暴れ影法師』で時代小説作家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
47
面白かったです。季節の移り変わりの中で市井の人々の姿が描写されていました。捕物帖でありながら人情ものでもある作品だと思います。2022/05/22
ぶんぶん
15
【図書館】「八丁堀春秋」の2巻目である。 相変わらず采女はおしゅんと仲睦まじく暮らしている。 ある時、掏摸のお甲からすり取った財布を預かった。その中の文書が問題だった、どうやら、その文面は誘拐に関するものだった。 密かに探索に当たる采女たちだったが・・・江戸の初夏から晩夏にかけて男たちの汗が光る、伊織が文三が、そして喜兵衛が半次郎が走る。誘拐事件のからくりが解けて、あとは「左利き」の浪人が捜査線上に上がるが、次巻への持越しとなる。その続きを書く前に著者が亡くなってしまった。思い起こすも残念。ご冥福を祈る。2021/11/14
yonemy
2
なかなか大仕掛けな捕物に、各所の人情噺がたっぷり散りばめられ、読み応え充分。同心を退いた主人公が義理の息子の新米同心ぶりを案じながらも、共に事件を追いながら、息子の能力や資質を発見し、推理や行動を頼もしく思うようになっていく様がうれしい。親子が一緒に働ける状況は、現代ではなかなか難しく、「世襲」というのも悪くないと思ったりした。2020/06/27
だいしょう@SR推進委員会
2
発端は誘拐の身代金要求の文。だが、事件は思わぬ方向にいき、霧に包まれたかのように、なかなかその全貌を現さない。事件を共に追う親子。息子の若さを思いながらその成長に戸惑い、また嬉しく思う主人公がいい。生さぬ仲だからこそ、主人公の情愛がはっきりと感じられるのだろうか。事件は解決しつつも、息子を襲った悲劇の謎はそのままだ。続編に期待。 2011/09/02
ぶーにゃん@積ん読本解消中
2
八丁堀春秋の2作目。主人公のおとぼけぶりと融通の利かない堅物な養子伊織との会話が楽しめます。若さ故の一本気、経験故の老獪さを登場人物にはっきりと持たせ作品をかっちりと仕立てています。主人公の岡っ引きを指揮するやり方、伊織への指導の仕方は職場でも使えるなあ。私もそろそろおとぼけのできるような仕事への余裕を感じさせる姿勢が取れたらいいなあ。2009/09/21