内容説明
長引く不況にあえぐ日本。広がる格差、減ってゆく子ども、増える自殺…生きることはますます窮屈になっている。けれど本当は、勝ち組負け組の線引きなんかに意味はない。きみはきみらしく、ゆっくりとすすめばいいんだ―。働くことや恋すること、趣味、子育ての話題から世界情勢まで、しなやかな視線で時代を切り取り、閉塞した「今」を生きる若者たちにエールをおくる。著者初のエッセイ集。
目次
組に分かれず
新人の椅子
自分をなくし、国を立てる
五月病へのアドバイス
「ビッグイシュー」のおおきな仕事
ジャズタクシーの演出法
転職のイエス・ノー
みんな、死ぬな
人口減少大国ニッポン
勝者のいないM&A〔ほか〕
著者等紹介
石田衣良[イシダイラ]
1960年東京生まれ。97年「池袋ウエストゲートパーク」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。2003年『4TEEN フォーティーン』で直木賞を、06年『眠れぬ真珠』で島清恋愛文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テル35
47
「自分の心の暗さや明るさ、温度や湿度を決めるのは、それぞれの人に任された仕事なのだ。」「表現の世界というのは、本来野蛮人の仕事だ。ドアを蹴破るか、自分で壁を壊して、窓をつくって入ってくる人間しか生き残れないのである。」優しさと厳しさが単刀直入に心に入ってくる。名人のお仕事。エッセイを読んで泣くとは思っていなかった。2025/04/30
もとむ
37
30代の頃、フリーペーパー「R25」を愛読していた僕としては、巻末に収録されていたこのエッセイを読むのが毎回の楽しみだった。なので、一冊の本として発売されてすぐに購入。今回再読してみて、あれから20年も経つのに変わらず面白いなあと思った。「男性諸君、クッキングは楽しいぞ」「夢は絶対に必要?そんなことはない」「出逢いは数!そして慣れ!」これらの文章を、とても優しく表現している。石田さんご本人のお人柄なんだろうなあ。一時期テレビにもよく出ていたけど、また元気なお姿を拝見したいものです。続編も読みたいですね。2025/01/29
いずむ
33
空は、いつだって、青い。その問い掛けに、ボクはこう答えるコトにした。雲が垂れ込めても、夜の帳が降りても、その本質は変わらない。その青さを見つけられないのは、青く見えるトコロにいないだけ、青く見える時ではないだけだ。悩んで苦しんで、ボクはまたこの本を手にした。きっと、正しいから選ぶんじゃない。味方をしてくれるから選ぶんじゃない。1人の人間、1人の男として、先輩の言葉を聴かせてくれる。人生の意味を、人生の価値を、ボク自身が決めればいいと教えてくれる。空を見上げて、青さを確かめる、一瞬の余裕を与えてくれるから。2013/02/15
いずむ
32
石田衣良さんのエッセイは初めて。数ページ読んで、なぜもっと早く読まなかったのか、と後悔。等身大の言葉、うつくしいことば。中身はとても語れません。小説で味わう感動とは違って、エッセイで味わう感動は人から教えられて、押し付けられて味わうものではない。エンタテインメントではないから。あえて言うなら、『世界の半分は心でできている』が最も今の日本に響くことばを綴っているのではないか、と思います。執筆から7年が経つ今、ますます読者の心を掴む文章へと、世界の方が変わってきていると思います。小説よりもオススメしたい作品。2012/01/03
ちぇけら
25
『山井の携帯の番号を知りたいんだが、調べつくかな?』『今日も空は青いか?あたりまえのことを聞くな』。マコトとタカシの声がよみがえる。とても変な言いかただけど、この本は、石田衣良版のウエストゲートパークだ。社会で生きることは、窮屈でつらい。思っていたほど仕事ができない自分に、他人と比べたがる同僚に、毎朝痺れるほど眠いからだを叩いて起きる生活に、嫌気がさす。「きみはきみらしく、ゆっくりとすすむ。ただし、ひとりぼっちだと嘆きながらではなく、自分の速度で」とびきりの処方箋だ。日々に忙殺され困憊した、ぼくらへの。2019/05/21