内容説明
全世界が注目するアポロ月面着陸のテレビ生中継を、一緒に見ようと早々に集まった作家仲間。人類のチャンピオンに敬意を払い、壮挙の歴史的瞬間を待った。だが、間をもてあました面々は、マージャンを始め…。“月”をにぎった男を描く表題作ほか、近未来をテーマにした作品など。著者の原点ともいえる自由奔放な発想の切れ味鋭いショート・ショート傑作集。
著者等紹介
小松左京[コマツサキョウ]
1931年大阪生。京都大学卒。61年「地には平和を」で第一回SFコンテスト選外努力賞受賞。以後、精力的に作品を発表。73年の「日本沈没」が日本推理作家協会賞を受賞し大ベストセラーに。日本SF界の第一人者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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イプシロン
45
人類の絶滅を必然と考え、絶滅までの未来をいかに有意義にするかを考えた小松左京。だけに、ショートショートにも辛味たっぷりの皮肉が香っている。慣習や伝統を顧みない都市設計や機械化、AI化の流れによって、人間と機械が衝突し、人間が機械に阻害され翻弄され、機械に仕えざるを得なくなる悲哀と滑稽さが炙りだされていく作品集。そのなかで時代は変われども「今」という時に生きることこそ人の幸福であると語る表題作からは、淡い光が迸っている。それは月光であり、毎夜見上げる月はいつでも、誰にとっても“一生に一度の月”の瞬きなのだ。2019/10/07
たま
17
五部からなるショートショート集。それぞれの部にカラーがあって面白かったです。第一部のお話の最後の一行の絶妙さや、第三部の滑稽さ、第四部の現実世界への皮肉がきいたお話などが特に印象的でした。2013/02/05
しんこい
6
団地から原子力、自販機といろいろなところに書いてますね。映像で衣装を着せかえて選ぶ仕組みなんて、今やっと実現しかかっていますがそれを昭和40年代に読んでもぴんとこなかったでしょう。ばあや、いたずら、ミリィが好み。2013/11/10
イプシロン
6
私の青春、小松左京。でも、この一冊は読んだ記憶がなかった。お気に入りは『一生に一度の月』『「ばあや」を探せ!』『再建』。昭和37年~49年までの作品のようですが、この3篇には普遍性があって、今読んでも全く色褪せていない問題提起があり、呻ってしまった。とくに『再建』は秀逸。自分が幸せだと思うことを、人も幸せだと思わないんだから、押し付けはやめろ。という親切することの難しさが表現されていた。何が人の幸せか。「物質的豊かさ」か、「心身の健康」か、「心の深い部分での安穏」か、どれも必要だが、優先順位はあるはずだ。2013/06/08
嫁宮 悠
3
日本SFの御三家・小松左京の掌篇集。前回読んだ筒井康隆の掌篇集と比較すると、切れ味の点では小松左京が上回っています。展開の予測できない意外性のある作品が好きで『向かい同士』『顔』『ミリイ』『ゴールデンウイーク』がお気に入り。『ゴールデンウイーク』はループもので、大型連休を永遠に繰り返すという内容。いわば「エンドレスファイヴ」。しかしずっと休みだぜうわはははってな感じにはならずに、ポンと膝打つ、おかしみのあるオチにもっていくあたり、小松左京の落語好きがうかがえるように思います。2016/10/06