出版社内容情報
江戸市中を焼き尽くす大火事。誰もが逃げまどう中、助けに来た寺の若衆を目にし、お七は妄想に絡め取られる(「火の華七」)。ほか、江戸の色事を通して人間の奥底を活写する短編7編収録。(解説/花房観音)
坂東 眞砂子[バンドウマサコ]
著・文・その他
内容説明
江戸を襲った大火で出会った寺小姓への恋心から付け火をしたといわれる八百屋お七。だが本当は、あの阿鼻叫喚の火の海の中で芽生えた、ある欲望が彼女を突き動かしていて―(「火の華お七」)。伊勢の遊女・おこん、大奥大年寄・絵島、「ご淫奔」と呼ばれた尾張藩主側室・本寿院…江戸の世で色事をめぐる事件を起こした女たちの心の内に渦巻いていた渇望とは。人間の欲望に迫る官能小説集。
著者等紹介
坂東眞砂子[バンドウマサコ]
高知県生まれ。奈良女子大学住居学科卒業後、イタリアのミラノ工科大学などでデザインを学ぶ。帰国後、フリーライターを経て作家デビュー。1996年『桜雨』で第3回島清恋愛文学賞、97年『山妣』で第116回直木賞、2002年『曼荼羅道』で第15回柴田錬三郎賞を受賞。14年1月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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k5
57
初夏の時代小説フェア②。そしてシリーズ八百屋お七。オムニバス形式で江戸の不祥事を書く作品で、清々しいほどエロいなあ、と思って読んでいたら参考文献のトップが『江戸の性の不祥事』。お七の話もそうですが、ゴシップ記事ネタが芝居や文学に昇華されていく江戸カルチャーって独特ですね、と思ったけど案外それが文学の本質かもね、と思う今日この頃です。2022/05/29
ann
48
手放しで面白かった!江戸に生きる有名無名の女たちの「色事」をめぐる事件を、独特の解釈で抉る短編集。「男は刹那、女は灰になるまで」という思いが頭の中を占める。酸いも甘いも噛み分けたオンナが、秋の夜長に読むには最適の本書。できればR40で。だって解説はアノ「花房観音」だし。2020/10/31
miwapicco
9
江戸の女性も楽しそう、、江島さんの感覚、現代ぽい(^ ^) といいつつ、お沙汰は怖い、、、 それぞれ、いろんな抑圧の中での生の烈しさが、生々しさがすごい。惜しい方を亡くされた、ほんとに?2018/08/23
cozy
6
これが遺作か! 八百屋お七に油屋騒動など、江戸を題材にした有名な物語を、坂東眞砂子ならではの女の性に絡めた短編集に仕上げた作品。解説が花房観音というのも含め素晴らしい。この作品の解説にこれ以上ない、という人だと思う!坂東眞砂子は多くの作品で女の性衝動を描いていたけれど、他作品以上にエロス満開な本でした。ある種、坂東作品の遺作にふさわしい! 2019/01/08
まめの助
3
★★★★☆絵島生島や八百屋お七など、江戸の事件を元にして描かれた短編集で、坂東先生の遺作。女が内に秘めた焔や情念、したたかさに唸り拍手したくなる。花房観音様の解説もさすがだ。もっと作品を読みたいと思う面白さ。2023/12/17