出版社内容情報
様々な症状の老人が暮らす痴呆病棟で起きた、相次ぐ患者の急死。理想の介護を実践する新任看護婦が気づいた衝撃の実験とは? 終末期医療の現状と問題点を鮮やかに描くミステリー!(解説/備瀬哲弘)
内容説明
お地蔵さんの帽子と前垂れを縫い続ける老婆、深夜になると引き出しに排尿する男性、異食症で五百円硬貨が腹に入ったままの女性、気をつけの姿勢で寝る元近衛兵、自分を二十三歳の独身だと思い込む腰の曲がった八十四歳。様々な症状の老人が暮らす痴呆病棟で起きた相次ぐ患者の急死。理想の介護を模索する新任看護婦が気づいた衝撃の事実とは!?終末期医療の現状を鮮やかに描く傑作ミステリー。
著者等紹介
帚木蓬生[ハハキギホウセイ]
1947年生まれ。東京大学仏文科卒業。九州大学医学部卒業。93年『三たびの海峡』で第14回吉川英治文学新人賞、95年『閉鎖病棟』で第8回山本周五郎賞、97年『逃亡』で第10回柴田錬三郎賞、2010年『水神』で第29回新田次郎文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りゅう☆
104
痴呆病棟の入院患者やその家族が現在の状況や若き日に体験した戦争など人生を振り返る。続いて、あえて痴呆病棟勤務を選んだ若き城野看護婦が日々の状況を語る。起床、入浴、排尿誘導、観察室や当直の様子など。これって20年も前に描かれたものなのに今97歳の祖母が入院中の病院と見事に重なる。祖母のお見舞い程度しか足を運んだことないけど。患者の痴呆(認知症)程度は人それぞれ。看護師らの懸命の看護、介護には頭が下がる思い。今まで遠い世界だった痴呆(認知症)がリアルに感じた。そして痴呆病棟だから死に直面することはよくある。→2019/05/21
naoっぴ
87
読みながら「アルジャーノンに花束を」を思い出した。アルジャーノンの脳が逆戻りして記憶が消えていく、それと同じことが現実にも起きているわけだ。読んだ当時、過去の人生はその人のもの、たとえ様子が変わろうともキミを敬う気持ちはそのままだからねと涙ながらに感じた気持ちが、痴呆病棟のお年寄りに重なった。理解できない行動も多いけれど、ふと心のうちやこれまでの人生が垣間見えたとき、その人となりに触れてはっとする。ラストの章には深く考えさせられた。高齢化社会に生きる人々に向けたリアリティに満ちた感動作。2019/01/22
のぶ
79
短いドキュメンタリーを多く観ているような印象を持った。一人の看護師から見た認知症を抱えた老人の臨床例や事例が約30集められている。こんな形式の小説だと想像していなかったのでちょっと面食らったが、その内容は千差万別。読んでいてつらいと感じる部分もあったが、これだけ多くの話を読むと、これが誰もがいずれ行く道だと思い、終末医療には真摯に向き合わなければならない気持ちにさせられた。文庫のあらすじにミステリーとあるがそれとはちょっと違うと感じた。2018/09/15
Smileえっちゃん
55
安楽病棟、表題を見ると怖く感じます。安楽死に繋がるからでしょうか。痴呆病棟(2004年認知症に変更)に入院される患者さんと家族の生活から始まります。理想の看護を実践する新任看護師、患者さん中心の看護をされている姿に共感します。オランダにおける安楽死の現状、問題点には深く考えさせられます。どう生きるのかでなく、最期はどう迎えるか、なのでしょうか。安楽死、それはどの時点で誰が判断するのか、安楽死、それは、犯罪にも繋がります。ホッコリする場面がありますが、最後はミステリー。2019/12/19
カブ
46
認知症患者が入院する病院で次々と患者が急死する。患者一人ひとりの人となりが丁寧に綴られているだけに、なかなかその死を受け入れることが出来ない。人はいつか死んでいくが、その最後の時まで自分を保っていられるのか。そうでなくなったらどうなるのか、考えさせられた。2021/04/15