出版社内容情報
第36回すばる文学賞受賞作。学歴も経験もいらず、特別な能力や技術もいらない。全ての評価はどれだけ家を売ったか。何も残らない仕事。なぜ僕は辞めずに続けているのだろう──。(解説/城 繁幸)
内容説明
学歴も経験も関係ない。すべての評価はどれだけ家を売ったかだけ。大学を卒業して松尾が入社したのは不動産会社。そこは、きついノルマとプレッシャー、過酷な歩合給、挨拶がわりの暴力が日常の世界だった…。物件案内のアポも取れず、当然家なんかちっとも売れない。ついに上司に「辞めてしまえ」と通告される。松尾の葛藤する姿が共感を呼んだ話題の青春小説。第36回すばる文学賞受賞作。
著者等紹介
新庄耕[シンジョウコウ]
1983年京都府生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2012年、第36回すばる文学賞を受賞した『狭小邸宅』にてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
utinopoti27
137
主人公の松尾は、中堅不動産会社の営業部に勤めるアラサーの独身男だ。パワハラが蔓延するブラックな職場で、営業成績が振るわず、上司から壮絶ないじめを受けつつも会社にしがみついている。ところがある日、難しい物件を成約にこぎ着けたことがきっかけで運が向き始める。そこから彼に訪れた変化とは・・。営業戦略がはまった時の快感は、徐々に心を蝕む麻薬だ。何かに憑かれたように仕事に没頭する彼には、人として本当に大事なものが、もはや見えなくなっていたのだろう。ブラック企業にどっぷり浸かった彼の行く末を暗示するオチが悲しい。2020/01/09
相田うえお
122
★★★☆☆19047 狭小邸宅というタイトルから建物とか建築に関する話かと思いきや、随分、方向が違いました。不動産の営業する主人公の若い男性が仕事を続けていくうちに変化していくさまから(良くも悪くもという意味で成長という言葉はパス!)、仕事とは人にとって何なんだろう?と、問いかけられている様な気がしてくる作品でした。書き出しは本当にブラックっぽくて苦手ジャンル的内容だったので読んでいて辛くなってしまいましたが、読み進めるうちに先が気になって一気読み!【呟き】家で待っていてくれる人が居るっていいですよね。2019/05/26
えちぜんや よーた
101
以前、営業の仕事していたときに、当月の売上を達成することを「やる」と言っていた。ただ物語で登場する、戸建販売の不動産会社では漢字を使って「殺る」と言うらしいした。上司から詰められるとローキックが飛んできそうな勢いで、ガクブル。2015/09/26
小説を最初に書いた人にありがとう
91
不思議な本だった。経動産業界に身を投じた若手社員を主役に最初はブラック企業の酷い話、その後、恋愛の話、そして営業のノウハウ、自己啓発的な話。しかし、振り返ってみるとどれでもないな。ときどき共感出来るが裏切られ。 一つ分かったことは仕事だけをしていると普通に感じられる季節などの感覚を忘れてしまう。そうなったら人ではなくなってるのかも知れない。自分も本気で笑ったことが数年なかったなと実感。バランスを取り戻そうと思わせてくれた一冊。2015/06/03
mr.lupin
77
不動産屋の営業マンの裏事情(他の会社でも有りうるけど)の話かと思って読んでいたけど、想像を反して後半は仕事に対する姿勢にある意味同じ営業マンとして、感銘を受けました。まぁ、世の中色んな仕事があって、色々な事情がありますね。豊川課長の過去が気になるな。☆☆☆★★2016/07/05