出版社内容情報
出張ホストを買う独身女、自殺願望を持つ風俗嬢、8人の女性と共同生活を送る中年男性に安らぎを覚える女ほか、平凡な幸せを求めるだけなのに、歯車がずれてしまう10人を描く短編集。(解説/山内マリコ)
内容説明
騙されていると知りながらも、出張ホストに貢ぐ「りつ子」。男の都合に合わせ、ソープ嬢へと身を落としていく「茉莉」。中学生の男子生徒に密かな欲情を抱く養護教諭の「和美」。ありきたりの生活の中にある、小さな小さなくぼみ。わかっていて足を踏み入れるのか、気づかないうちに、穴が広がってすべり堕ちてしまうのか。一途に愛することの幸せ、そしてその代償。十人十色の愛のカタチを描く、傑作短編集。
著者等紹介
唯川恵[ユイカワケイ]
1955年金沢市生まれ。金沢短期大学卒業。銀行勤務を経て84年「海色の午後」で第3回コバルト・ノベル大賞受賞。以後、恋愛小説やエッセイを発表し、2002年『肩ごしの恋人』で第126回直木賞受賞。2008年『愛に似たもの』で第21回柴田錬三郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アッシュ姉
77
歪んだ愛に溺れ、十人十色に堕ちていく女たち。出張ホストに貢ぐ女、重度の男性依存症、男子中学生に欲情を抱く養護教諭、アイドルの追っかけに夢中の女子高生、息子を溺愛する大女優。度を越した執着の果てに奈落の底を覗き見した気分だが、堕ちていく当人は天に向かっているようにも見える。ぞわっとしたり、ホッとしたり、ドン引きしたり、スカッとしたりといろいろ楽しめた。セレブ御用達クリーニング店員の「りつ子」、夫の反対を押し切って犬を飼い始めた「汐里」の話がお気に入り。2017/06/05
キムチ27
61
装丁は慎ましやかなのに・・あぁ~ここまで堕ちていくと上がるっきゃないかぁ~と天を仰ぐ。僅か10人、ネカマを含むおんなの話。でも「辟易」が連続すると大概なもん。正直、疲れる、どうでもいいや、勝手にしろっていう気にもなる。一篇にある【世の中、男と女と女優】そしてセックスしかないんか!?とはいうものの、作家とは言えここまで多種多様にミックスアレンジをできる唯川さんに感心。正江~余りといえば歪み過ぎの親心、茉梨~目先の欲望を小鳥がえさを啄むようなあり様、奈々美の空っぽさ、光の堕天使ぶり、妙子~良くもまぁ堕ちている2015/12/07
団塊シニア
59
10人10色の愛の形とぴうより10人10色の生き方とぴう感じがする作品である。 イエスの方舟事件を思わせる「可世子」が発想含め印象に残る内容でした。2013/11/25
らむり
51
色んな立場の女性が主人公のサスペンス短編集。多様な生き方を選べる女性ならではのお話だと思いました。面白かったです。最近の唯川さん作品はハズレがないですね。2014/01/20
はつばあば
50
現実に有り得る内容ばかりでしたが、今の若い人達には新鮮でカウンセラーのような本だと思われるかもしれない。昔は大家族で御近所様も自分の子も他人の子も見境なく接して、「あ~しちゃいけない、こ~しちゃいけない」と煩わしい事もあったが、その中にいっぱいの人生教訓が含まれていた。そんな教訓を念頭に置いて平凡な主婦になったが、守られているばかりでなく、守るモノがある今、老後を共に過ごす戦士となった。・・戦士と大見えを切ったが・・時代の情勢に合わすのがなかなか大変で戦死ししそう(笑)2015/08/19