出版社内容情報
大久保利通が提唱した猪苗代湖の水を郡山に流す安積疏水開拓を描く歴史小説。没落士族と現地の人々の明治版プロジェクトX。
内容説明
明治10年、内務卿大久保利通は、猪苗代湖の水を郡山へ流す安積疏水事業を提案。没落士族救済のため、肥沃な農地を拓くという。大分出身の南一郎平を責任者にするが、奥羽山脈を貫く難工事の上に、癖のある男たちが次々と登場して紛糾。さらに大久保暗殺事件が起こる。南はオランダ人技師と協力し、工事を進めようとするも…。巨額の国家予算を投入した日本初の大プロジェクトを描く歴史小説。
著者等紹介
植松三十里[ウエマツミドリ]
静岡市出身。昭和52年、東京女子大学史学科卒業後、婦人画報社編集局入社。7年間の在米生活、建築都市デザイン事務所勤務などを経て、フリーランスのライターに。平成15年「桑港にて」で歴史文学賞受賞。平成21年「群青 日本海軍の礎を築いた男」で新田次郎文学賞受賞。同年「彫残二人」で中山義秀文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はちこう
13
表紙と副題に魅かれて手にしたが、主人公は大久保利通ではなく、福島の猪苗代湖と郡山を結ぶ「安積疎水」の工事に携わる、南一郎平(日本三大疎水の父)とその仲間たちの群像劇という内容だった。大久保の登場シーンは少ないが、士族の反乱が続く中、大久保がこの国家プロジェクトに懸けていたであろうことが伝わってくる。「安積疎水」の完成を見ることなく道半ばで大久保は暗殺されてしまう。大久保はどこか維新のヒール役という印象だったが、彼の人間味ある一面を知る良い機会になった。2025/05/03
ポメ子
7
安積疏水の成り立ちとそれに携わった人々のドラマ。安積疏水について、とても詳しく知る事が出来た。2025/01/07
のりさん
2
ファン・ドールン像は本書通り足元が本当にセメントで固定されているとの事。戦時統制の中で銅像を隠すという英断をよくぞしてくれたと称賛したい。そして本編の安積疎水事業は関係者達の熱い情熱がヒシヒシと感じられて読み応え抜群。素晴らしい小説でした。2025/04/27
好奇心
1
疎水とは、人工水路のこと日本三大疎水 安積・琵琶湖・那須 明治10年代に完成したのが今の福島県の安積疎水、大久保利通が暗殺される直前、提案した最後の夢の土木工事である原野を開発し稲田をつくる士族授産政策の一つかもしれないトンネル掘削機械・ダイナマイト等 西洋土木技術を取り入れ着手、その先頭に立ったのが大久保に見出された南一郎平、土木基礎能力有していただろうが、それを上回る集団統率力・調整力に驚かされたファン・ドールンの銅像を金属供出から土中に埋め、守った人たちに敬意を表したい、大久保さん地下で喜んでいる 2025/03/06