出版社内容情報
昭和40年代、好景気を尻目に、敢えて時代から取り残されようとする雀士たちの寂寥の正体とは。第36回吉川英治文学賞受賞作。
内容説明
昭和40年代、ベトナム特需に沸く横浜港に流れついたガン、サクジ、トミヤス、キサン。彼らの遊びは決まって一人が抜ける三人麻雀だった―。世間の好景気を尻目に、自ら望んで時代から取り残されようとする男たちは、何を目指して生きるのか。あてどない流謫の日々、つかのまの花見の宴。その悲しみと寂寥の正体とは何なのか?男たちの流浪を描いた傑作長篇小説。第36回吉川英治文学賞受賞作。
著者等紹介
伊集院静[イジュウインシズカ]
1950年2月山口県生まれ。立教大学文学部卒業。91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞、15年『ノボさん小説 正岡子規と夏目漱石』で第18回司馬遼太郎賞を受賞。16年に紫綬褒章を受章。23年11月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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海猫兄弟
6
昭和六十年代からバブル後までの話。本牧の定食屋で出される銀鱈定食、これが縁で繋がる四人の無頼漢。時々集まっては麻雀を打つようになり、やがて互いの人生が重なり合って行く。ベトナム特需に沸く横浜はきな臭く世間は騒がしい。勤め人の適性が無い四人は社会の外縁でしか生きる事ができない。そんな彼らが打つ三麻は人間性を晒す勝負の場でもあり、それ故に奇妙な信頼関係が育まれる。戦争が終わると地ならしされた都会に四人の居場所はなくなり、一人欠けまた一人欠けて行く。代わりのメンツで打つ麻雀はもはや単なるゲームに過ぎなかった。2025/01/07
よっしー
3
★32025/05/23
かずぺん
3
伊集院節が心地良く心に響きます。亡くなってしまったことが悔やまれます。2024/10/04
りんこ
0
著者が亡くなったことで、文庫をふと手に取りました。 主人公に、伊集院静を投影しないわけにはいかず、仄暗く静かに哀愁と情愛が交錯する世界観に浸りました。 4人の抱える孤独や悲しみを、伊集院静も感じていたのだろうなと想像を巡らせました。 2025/04/21
八木 貴
0
伊集院さんが亡くなって初めて文庫化された吉川英治賞受賞作。昭和40年代の横浜港に流れ着いた4人の男たちの生き様が描かれる。皆それぞれ事情を抱え、時代から取り残された悲しい生き方しかできない。主人公ガンさんは著者の投影と感じた。つぎは同じく文庫された『でく』を読むつもり。 2024/12/04