出版社内容情報
優しさと寂寥感が同居する画風で、寡作ながら今も多くの人々を魅了する画家、松本竣介。その生涯を追う中で創作の本質に迫る渾身作。
内容説明
画家、松本竣介。30代で早世し寡作ではあったが、遺した作品は特別な存在感を放つ。聴覚を失った少年期、兄の導きで上京、画家を志し、多くの仲間と出会った青春期。そしてある女性との運命的な出会い。竣介の生涯を追いながら、評伝ではなく小説として書くことで、物語は執筆者自身、ひいては全創作者の物語へと昇華する。ものを作り、それで生きていくことの意味と正面から向き合った意欲作。
著者等紹介
鳴海章[ナルミショウ]
1958年北海道生まれ。日本大学法学部卒業。91年『ナイト・ダンサー』にて第37回江戸川乱歩賞を受賞し、同賞史上初の航空冒険小説家として脚光を浴びる。“ゼロ・シリーズ”四部作にて航空小説家としての地歩を築いた後、警察小説や時代小説などを手がける。18年からは「池寒魚」名義でも活動(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
播州(markⅡ)
9
松本竣介の作品を拝見したとき、子供に向ける惜しみない愛情を感じ、肩肘の張らない人なのだろうと印象を受けたが、それに違わない主人公だった。淡々と出来事が過ぎ去っていくが、どこか深いところに物語の力を感じずにはいられない。長男・長女との死別に戦争と辛い体験もしているが、自分は恵まれている、幸せだと感じることができる主人公に勁(つよ)さを見た。中野への問いかけに自身が歩んできた道筋を端的に表しているのが心に残る。ラスト10ページは涙なしには読めない。松本の作品だけでなく、この本もまた勁い作品だと感じた。2025/04/18
Yuco
4
1行々丁寧に読んだ。間違いなく勁い本。聴力を失い、我が子を失い、迫り来る戦禍でも、勁い線を、勁い絵を、とひたむきに芸術と向き合っていく孤独な背中には感じるものがあった。わたしも絵を描いているので、自分の絵を描きたいと思う竣介の気持ちがよくわかる。どんなときも自身の芸術の肥やしにしようという姿勢に励まされ、触発された。夭逝の天才画家はこのように生きて天に続く道を歩んでいったのだなぁ。間違いなく私の大事な1冊となった。2024/08/09
しっぽちゃん
4
【図書館】★★★☆☆2024/07/13
ぱぴぷぺぽ
2
***** 描かれた絵についても画家仲間についても実に丁寧に書かれている。松本俊介の画集とタブレットを片手に紹介されている絵を読み比べてしまった。絵筆一筆にどんなに心が込められていたか改めて感心した。 家族友人に恵まれて幸せな一生だったと思った。2024/10/03