出版社内容情報
京から大宰府に左遷されたが、書画骨董の目利きを愉しむようになった道真。朝廷への献上品が贋作と知り……。ユーモラスな歴史小説。シリーズ第2作。
内容説明
菅原道真が、大宰府に流されて五カ月。左遷に怒り泣き喚いていた道真も、身分をやつして博多津に出かけ、唐物の目利きをする愉しみを覚えた。ある日、京から唐物使の役人が来る。昨年朝廷に献上された品に不審な点があったため内偵中という。調べの間、道真は館に閉じ込めとなり…。大宰府を欺いた悪党を炙りだすため、大学者の才を惜しみなく発揮する左遷男の活躍!ユーモラスな歴史小説。
著者等紹介
澤田瞳子[サワダトウコ]
1977年京都府生まれ。同志社大学大学院博士前期課程修了。専門は奈良仏教史。2011年デビュー作『孤鷹の天』で第17回中山義秀文学賞を最年少で受賞。『満つる月の如し仏師・定朝』で12年に第2回本屋が選ぶ時代小説大賞、13年に第32回新田次郎文学賞を受賞。16年『若冲』で第9回親鸞賞、21年『星落ちて、なお』で第165回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のぶ
117
自分は前作の「泣くな道真」を読んでいないので、どうなる事かと思ったが問題なく読む事ができた。菅原道真は大宰府に流されたのは知っていたが、その地でどんな生活を送っていたのかは謎だった。本作では道真の暮らしぶりを垣間見る事ができた。何かと神格化された人物だが、人間臭くユーモラスに描かれていた。とは言うものの、道真が前面に出てくることはあまりなく、周囲を取り巻く脇役がとても魅力的で面白い作品になっていた。物語は書画骨董の目利きを愉しむようになった道真が朝廷への献上品が贋作と知る話で騒動が巻き起こる話です。2022/10/26
タイ子
110
「泣くな、道真」に続く第2弾。道真が大宰府に流されて5か月。元号が新元号になる日っていつの時代にもワクワク。そんな大事な日に都からの詔に道真を貶める言葉が書かれていたからさあ大変。道真は怒った!破いた、大事な帝からの詔書を。やはり、道真は素直で可愛いと思った一幕。今作は道真より、小野葛根の人物像を描いた場面が多くて前作の方が私には面白かった気がする。妹の小野小町が東北に行ってしまったので登場しなかったのは残念。その代わり、葛紘の息子・阿紀の存在がいい。道真の書に心酔し、彼が後の小野道風というのも頷ける。2022/11/18
がらくたどん
95
去年の秋から「梅が咲いたら」と取り置いた菅公左遷記2冊目。『泣くな~』でようやく左遷ライフに生きがいを見つけたはずなのに表紙めっちゃ咆えてんな。事の起こりは改元の詔。あんなに尽くしたのに朝廷を飲み込む巨大怪魚呼ばわりするなんて!でも行動する左遷ライフの味を知った道真公。大宰府から朝廷への献上物贋物疑惑の解明へ邁進してゆく。今回の軸は「忠心」とはなにか?それは帝の威光を護る事一時なのか?恩人の経歴に汚点を付けぬよう庇うことが、親の想いを汲む事だけが本当に「忠」なのか?雷帝呪詛の逸話も織り交ぜ、管公の大活躍♪2023/02/16
クプクプ
88
上野の美術館で伊藤若冲展が流行った年に上野で若冲展を見られず、箱根の岡田美術館へ伊藤若冲の「孔雀図」「鳳凰図」をロマンスカーに乗って見に行ったことがありました。その時に岡田美術館で、恐らく中国の古い陶磁器の展覧会を開催していて、気持ち悪くなるくらい大量の陶磁器を見たのを思い出しました。大宰府に唐物屋があったと書いてありましたが、恐らく私が見たような陶磁器を売っていたのではなかったかと想像しました。澤田瞳子さんは小説で「若冲」も書いていますし、私とは相性がよく、今、読んで学ぶべき作家だと思いました。2023/02/02
chimako
81
昔から菅原道真には何となく思い入れがある。実家の町内の山間に「北野の天神様」がありお正月にお参りするのは年中行事の一つ。結婚し居所が変わっても年の始めには子ども達の学業をお願いしてきた。その、道真である。大宰府に流され鬱々と過ごしているかと思いきや、「菅三道」と名乗り橘花斎のもとで目利きとして活躍中。そこに都から唐物使の役人が!!道真の勝手を知られてはならずと屋敷から出さぬ算段をするのだが。 今回は後の小野道風が可愛らしく登場。歴史の隙間を楽しませてくれる。人を救うのは己自身のみ。支えるのも自身。心得た。2023/06/14