出版社内容情報
施設で育った芳子と周也。その関係は愛でも情でもない関係に変容して──。業を背負った男女の繋がりを描く長編小説。
内容説明
共に八王子の養護施設で育ち、社会に出てからも同じ家に暮らす周也と芳子。どんな仕事に就いてもすぐに辞めてしまい言い訳ばかりの周也を、芳子はただただ優しく受け入れる。たとえ彼がどんな“罪”を犯そうとも。恋とも家族愛とも似て非なるその関係は、裏社会の人びとも巻き込んで思いもよらない方向に突き進み―。恋愛小説の旗手が、業を背負った男女の繋がりを描く傑作長編。
著者等紹介
唯川恵[ユイカワケイ]
1955年金沢市生まれ。金沢短期大学卒業。銀行勤務を経て84年「海色の午後」で第3回コバルト・ノベル大賞受賞。以後、恋愛小説やエッセイを発表し、2002年『肩ごしの恋人』で第126回直木賞受賞。08年『愛に似たもの』で第21回柴田錬三郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つぐみん
14
なんとも言えない読後感。共依存する芳子と周也。どうしてこうも、ダメな方に流れていくのだろう。どうして離れられないのだろう。ちょっとしたきっかけでうまく行きそうになるのに、そのたびになぜか悪い方に流れる。どうもスッキリせず、希望も持てなかった。2022/07/16
こばゆみ
10
施設で育ち、お互いが依存しあうような関係の芳子と周也の物語。いろんな登場人物が出てくるのだけれど、大抵芳子と周也に巻き込まれたせいで良くない結末を迎えていて、読後感はあまり良くなく… 昼ドラっぼいドロドロ感に満ちたお話だった。2022/05/06
駒
6
血の繋がらない、恋愛でもない、でもその結び付きが強かった。正直二人に苛々した。特に周也の甘さに。二人の関係は自分の人生には辿り着けないものだと思う。社会の暗部とか、引き込まれました。苛々しながらもどんどん読んでしまう作品でした。2023/05/27
Koji Hozumi
6
施設で育ち、社会に出てからも、同じ家に住む男女。二人は血はつながっていないが、姉弟のような関係で生活している。男は社会になじめず、様々な”罪”を抱えていくが、それを受け入れる女。離れられない二人。世の中から逃げながらたどり着いた先は。 どうしてなの、もっといい方法があるだろう、などと考えていたら、この物語は嫌な方向に行ってしまう。むしろ、二人の抱える闇に、気持ちを寄せていくほど、話の中に入り込み、二人の本質が手に取るようにわかり始める。その何とも言えない感覚が、この一冊の持つ魅力ではないだろうか。2022/09/07
きょうりゅう🦕
5
1度目ハラハラしすぎたので再読。このような小説はこの本が初めてで不思議な気持ちになりました。 芳子の甘さ/盲目さと周也の短絡さ/純粋さは相性が悪く、それに本人たちが気づいていない。周りを巻き込みそれでもまだ改めない、とにかく末恐ろしい、と思う。 これは愛ではない、と思うほど強くそして曲がった愛でした。 光が強すぎて逆に目の前が真っ暗になるような感覚。こんな話を書けるなんて唯川恵さん、一体何者なんだと思いました。性的描写もあるので人に薦めたりは個人的にはしづらいですが、お話が面白いのでまた読むと思います。2023/08/04