出版社内容情報
推古天皇の甥である厩戸皇子(聖徳太子)は、大臣の蘇我馬子から、ある話を持ちかけられた。それは、成文化された国史をつくる、ということだった。学識と才能に恵まれた厩戸皇子は、王位継承などのまつりごととは無縁の生活を送っていたが、この依頼に興味を抱き、作業を開始する。
「古事記」「日本書紀」のもとになったといわれ、のちに焼失したという幻の史書の編纂を描いた時代小説。
内容説明
聖徳太子が編んだ国史には、倭国のおおもと作りに貢献した巫女モモソヒメや出雲の蛇神や(「アマテラスオホヒルメ」)、そのはるか前におのごろ島を生み出した淡路のイザナキ、イザナミの神や(「おのごろ島のいざない神」)、蘇我氏の祖先である葛城の勇者たち(「葛城の高木の神」)など、今はもう忘れ去られ、幻となった神と人とのきらきらしい物語が記されていた。古代史小説の新たな傑作。
著者等紹介
周防柳[スオウヤナギ]
1964年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、編集者・ライターに。2013年「八月の青い蝶」(「翅と虫ピン」改題)で第26回小説すばる新人賞、15年同作で第5回広島本大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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紅香
24
他の国に引けを取らぬよう国史を作りたい。厩戸皇子は舟史龍へ命令し、各地に伝わる物語を摘みに行く。。『古事記』の足掛かりとなっていく物語にも一筋縄ではいかない。物語のお陰で隠喩された出来事は沢山あるのではないだろうか。それは本来あってはならない秘め事。『しかたがない。ものを語る者はおのれの利からしかものを語らぬものじゃ』俯瞰してみればこの物語も夢のまた夢。『おのごろ島のいざない神』が印象的。やっぱりこの時代は余白があって面白い。2022/05/30
TheWho
9
前読の「蘇我の娘の古事記」の続編で、古事記の基となった天皇記、国記の成り立ちを綴った前述談的な古代史絵巻。物語は、「蘇我の娘の古事記」で、天皇記と国記を持ち出した船恵尺の父親の船史龍が聖徳太子こと厩殿皇子に呼び出され国史編纂の為各地に残る旧家の神の言い伝えや伝説の現地調査を命じる所から始まる。そして、それら別々の伝説のエッセンスを繋ぎ合わせて壮大な国史を創作する厩戸皇子の驚愕な深謀遠慮が、物議を醸す内容として描かれている。ともあれ悠久の古代史絵巻を堪能した1冊です。2022/07/01
セイコリーノ 願わくは図書館、本が「希望の綱」となりますように
4
まずまず、面白かった。シシ神様がでるのは、奈良の山々だったのですね。 2023/05/29
かみーゆ
3
『蘇我の娘の〜』が素晴らしかったのでこちらも。悠久な感じ(語彙が…)がホントにステキ。神様の名前が全然覚えられないこともあって読み急げないので、余計にゆっくり浸れるのがいいです。蘇我馬子が魅力的に描かれてるので、勝手に悪役というイメージ持ってましたけど変わりますね。他の方の感想にもありましたけど、こういうの大河ドラマでやって欲しいなあ。2022/02/23
のり塩
3
以前、周防柳さんの「蘇我の娘の古事記」も読みました。普段は江戸の時代小説を好んで読みますが、さらに古い時代を背景とした周防さんの作品を読むと、この国の黎明期に思いを馳せることができて、悠久の時の流れを感じます。漢字の読み方が難しかったり、血縁関係がややこしかったりするのも、焦らずに読めばひとつの楽しみです。2021/12/27