出版社内容情報
その「批判と抵抗の哲学」に学べ!魯迅を思想的故郷とする著者が夏目漱石、竹内好、久野収など縁のある作家・思想家を振り返る。
内容説明
「会社国家」であり、「官僚国家」でもある日本では、「精神のドレイ」が主人の意向を先取りする、いわゆる忖度が大流行りである。まじめ主義者と多数に従ういい人ばかりのこの国に、いま必要なのが魯迅の「批判と抵抗の哲学」だ。魯迅を自らの思想的故郷とする著者が、血肉となった作品を論じ、ニーチェ、夏目漱石、中野重治、竹内好、久野収、むのたけじら、縁の深い作家・思想家を振り返る。「永遠の批評家」魯迅をめぐる思索の旅は、孤高の評論家の思想遍歴の旅でもある。
目次
一九〇四年秋、仙台
エスペラントに肩入れした魯迅と石原莞爾
満州建国大学の夢と現実
上野英信の建大体験
故郷および母との距離
魯迅とニーチェの破壊力
死の三島由紀夫と生の魯迅
夏目漱石への傾倒
中野重治と伊丹万作の魯迅的思考
久野収と竹内好の魯迅理解
武内好の太宰治批判とニセ札論
魯迅の思想を生きた、むのたけじ
魯迅を匿った内山完造
魯迅の人と作品
著者等紹介
佐高信[サタカマコト]
1945年山形県酒田市生まれ。評論家。慶應義塾大学卒。高校教員、経済誌編集長を経て、現職。「憲法行脚の会」呼びかけ人の一人。「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」共同代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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フム
25
「もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」という「故郷」の言葉は有名で本文にも出てくる。「魯迅を生きる」ように「魯迅と生きる」道を歩んできた佐高氏が、魯迅に関わった夏目漱石、太宰治、中野重治、竹内好、むのたけじなどについて書いていて、興味深く読んだ。魯迅の言葉はほとんどそれに耳を傾ける人間のいないような中で磨かれた。魯迅は永遠の批判者なのだと佐高氏はいう。評論家として「批判をしぬいて」来た著者も厳しい世の中においていつも魯迅を感じて来たのだろう。タイトルが心に沁みた。2019/12/19
呼戯人
18
佐高信が、ずっと魯迅を読み続け、さらには魯迅が影響された夏目漱石やニーチェあるいは魯迅に影響された竹内好や久野収、中野重治や伊丹万作を取り上げ、印象深い引用とともに魯迅思想の骨格を取り出す試み。本文の殆どが引用からなっていて、著者の思想遍歴の辿り直しという感じだが、魯迅への入り口としては面白い本だと思った。文学者・批評家としての魯迅を読み直そうという意欲を掻き立てられた。世界各国の第一級の批評家を読み直すという試みもいいかなと思った。つまり、ジョージ・オーウェルやベンヤミンなどとともに魯迅を読む試み。2019/11/03
魚京童!
12
論語は間違っている。社会は孤立化し、出生率は低下。世界は終わりを迎えようとしていて、ロシアは核ミサイルを準備し、南海トラフから富士山が噴火するらしい。きっと解決策はコンクリートジャングルに閉じこもって、アップルのVRを見ながら、核爆発の中死ぬことなんだろう。私の中だけで完結する世界において、不幸せは存在しない。不幸せが見えない世界に幸せしかありえない。ディストピア万歳。だからお酒に逃げるのだろう。逃げて、逃げて、逃げて、逃げきれなくなってから戦えばいい。そして負ければいい。それでいいのだ。結局魔の山なのだ2023/06/08
ひかりパパ
12
去年から上海で仕事をしている知人から最近受け取ったメールに「中国にとっての作家魯迅は、多分日本にとっての夏目漱石的存在と思います」と書かれてあった。この本で、魯迅が東京留学中に友人と漱石の旧居に住んだこと、漱石に傾倒していたことを知った。知人は「魯迅はいわば「左翼サークル」に属し上海の中国共産党幹部とも交流があったためか、魯迅記念館で手厚く顕彰されていると感じました。うがちすぎかも知れませんが中国共産党による統治の正当化の根拠の一つとして利用されている側面も」と指摘。今度帰国したら詳しく話を聞いてみたい。2022/02/19
どら猫さとっち
8
中国を代表する作家・魯迅。今ではあまり知られていないが、日本でもゆかりのある作家であり、彼の作品「故郷」は、国語の教科書に掲載されているので、知っている方もいるだろう。彼を最も尊敬し、人生の師と仰ぐ経済評論家の佐高信氏が、自らの人生の魯迅体験を綴った礼讃。何よりインパクトがあったのは「まじめナルシズムを捨てよ」。そして彼から学ぶ批判と抵抗の哲学。まだ読んだことがないので、一度読んでみよう。2019/11/30