出版社内容情報
「従軍慰安婦」や「南京虐殺」を否定する書籍がベストセラーになっているが、そこに書かれていることは果たして本当なのだろうか? それを検証し、歴史問題を読み解く「リテラシー」を伝授する!
内容説明
今、出版界と言論界で一つの「戦い」が繰り広げられている。南京虐殺や慰安婦問題など、歴史問題に起因する中国や韓国からの批判を「不当な日本攻撃」と解釈し、日本人は積極的にそうした「侵略」に反撃すべきだという歴史問題を戦場とする戦い、すなわち「歴史戦」である。近年、そうしたスタンスの書籍が次々と刊行されている。実は戦中にも、それと酷似するプロパガンダ政策が存在した。だが、政府主導の「思想戦」は、国民の現実認識を歪ませ、日本を破滅的な敗戦へと導く一翼を担った。同じ轍を踏まないために、歴史問題にまつわる欺瞞とトリックをどう見抜くか。豊富な具体例を挙げて読み解く!
目次
第1章 「歴史戦」とは何か
第2章 「自虐史観」の「自」とは何か
第3章 太平洋戦争期に日本政府が内外で展開した「思想戦」
第4章 「思想戦」から「歴史戦」へとつながる一本の道
第5章 時代遅れの武器で戦う「歴史戦」の戦士たち
著者等紹介
山崎雅弘[ヤマザキマサヒロ]
1967年大阪府生まれ。戦史・紛争史研究家。『日本会議 戦前回帰への情念』(集英社新書)で、日本会議の実態を明らかにし、注目を浴びる。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
115
何だろう、この頑なさ。戦争関連本を何冊か読んだ流れで、今も少なからずいるあの時代の国の姿を理想とする人々について知りたくて、手に取った。歴史上の事象は焦点の当て方で見え方が変わるから、「歴史戦」を志向する国や集団がいるのはわかる。でも、反証となるファクトや反論を拒否し、敗戦に至った本質から目をそらし、「大日本帝国は悪くない」論に閉じこもる先に何があるのか。国内外の厳しい局面下、広い視座から難しい判断を求められる状況にあることを思えば、害にしかならないような。多面的・本質的に考えることの重要性を改めて思う。2020/08/31
もりやまたけよし
69
戦前の日本を大日本帝国としてキッチリ、かたをつけないといつまで経っても前に進めないということですね。勇気のある本でした。2019/05/31
skunk_c
64
「従軍慰安婦」「南京事件」などがなかったとするいわゆる「歴史修正主義」の論理展開をつぶさに批判、その本質を権威主義的な大日本帝国礼賛と喝破する。産経新聞や「正論」、さらには具体的な論者名をあげて、その矛盾した論理をわかりやすく批判、また、歴史の専門家達と異なる「都合のいい証拠だけで論じる」姿勢の論者の問題点を詳らかにする。だが、この本はそうした思考にはまりやすい人に届くかというと、残念ながら難しいだろう。そこには「レッテル貼り」による思考停止という大きな障壁がそびえている。これをいかに崩すかが課題だろう。2019/08/15
hatayan
54
「日本は悪くない」という結論を先行させ都合の良い事実を切り貼りする「歴史戦」。学術的な向き合い方は軽視され、大日本帝国の名誉を回復し中国や韓国に「勝つ」ことが至上とされます。 歴史戦の先祖は1930年代の「思想戦」。心を攻めるという言葉のもと、メディアと国民が総力戦に組み込まれた過去を解説。そのなかでも、右翼の大物とされた児玉誉士夫は日本の尊大な態度は国際社会で信頼を得られないと見抜いていました。 相手側の心情を理解せず一方的に自国の言い分を発信しても独りよがりに終始することは、昔も今も変わらないのです。2019/05/18
樋口佳之
40
「大日本帝国」の名誉を回復することを目標とする「歴史戦」であれば、勝てる可能性は事実上ゼロ/なぜなら、国際社会において、戦後から現在にいたる「日本国」を尊敬して肯定的に評価する国は数多く存在しますが、政府が公式に戦前と戦中の「大日本帝国」を尊敬して肯定的に評価する国など、ただのひとつも存在しないから/勝ち負けで語る記述に多少の違和感あり/そもそも「歴史戦」の戦士達国外で勝つことなど最初から念頭にないのでは。(または既に常に勝っている妄想)2019/06/22