出版社内容情報
『東京物語』が世界の映画監督が選出したベスト映画となり、今も注目される小津安二郎監督。小津の名声は紀子三部作『晩春』『麦秋』『東京物語』の原節子の号泣によって不滅となった、という野心的評論。
内容説明
小津安二郎は今なお注目を集めている映画監督である。その小津作品の中でも頂点と評されるのが紀子三部作、『晩春』『麦秋』『東京物語』だ。各作品のフィナーレに近い場面で、ヒロインを演じた女優原節子は全身を震わせて泣き崩れる。小津が、不滅の名を残し得たのは、この三本の映画のフィナーレで原に号泣させたからだといっても過言ではない。「泣く」という行為を切り口に、幸福の限界、幸福の共同体の喪失、という小津映画の主題と思想的本質に迫る画期的評論。
目次
第1章 ほとんどの小津映画で女優たちは泣いた
第2章 小津映画固有の構造と主題
第3章 思想としての小津映画
第4章 原節子は映画のなかでいかに泣いたか
第5章 原節子をめぐる小津と黒澤明の壮絶な闘い
第6章 『晩春』(1)―原節子、初めての号泣
第7章 『晩春』(2)―娘は父親との性的結合を望んでいたか
第8章 『麦秋』―失われた幸福なる家族共同体
第9章 『東京物語』―失われた自然的時間共同体
第10章 喪服を着て涙も見せずスクリーンから消えていった原節子
著者等紹介
末延芳晴[スエノブヨシハル]
1942年東京都生まれ。文芸評論家。東京大学文学部中国文学科卒業。同大学院修士課程中退。1973年欧州を経て渡米。98年までニューヨークを拠点に現代音楽、美術等の批評活動を行い、帰国後文芸評論に領域を広げる。『正岡子規、従軍す』(平凡社)で第二四回和辻哲郎文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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