内容説明
日本映画発祥の地・京都。その西郊に位置する太秦には、東映、大映、松竹の三社が撮影所を構え、絢爛たる娯楽時代劇を製作してきた。だが1960年代後半、映画産業の衰退とともに、時代劇は切り捨てられる。職場を失った撮影所の「職人」たちは、当時の新興メディアであったテレビに活路を求めた。そんな彼らの挑戦は、やがて『木枯し紋次郎』『座頭市』『必殺』など、テレビ史に残る幾多の名作・傑作時代劇として結実する―。時代の変化と戦いながら、モノづくりの気概を貫徹した人々の熱い物語。貴重な証言で綴る、懐かしのあの作品の製作秘話も満載。
目次
第1章 東映時代劇、テレビへ(王国の崩壊;フロンティア・スピリット ほか)
第2章 大映・勝プロの葛藤(頂からの転落;勝新太郎の決起 ほか)
第3章 松竹京都映画と『必殺』シリーズの実験(置き去りになった撮影所;プロデューサー・山内久司の覚醒 ほか)
第4章 東映の転身(量産から合理化へ;本体のテレビ進出と映画村 ほか)
著者等紹介
春日太一[カスガタイチ]
1977年東京都出身。日本大学大学院博士後期課程修了。芸術学博士(テーマは「1970年代の京都諸撮影所における時代劇製作」)。時代劇を中心とした、日本の映画・テレビドラマの研究家。京都の撮影所文化を後世に残すべく、当事者たちへの聞き書きをライフワークとして行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星空の挑戦者
5
時代劇撮影に命を賭けた職人たちが京都にこんなにたくさんいたとは。「オードリー」という朝ドラもありましたが、あのお話のように時代劇映画作りの情熱が伝わりました。いつかサムライ映画の本格的復活ってあるんじゃないでしょうか。春日さんの取材力すごい。2011/02/20
桂 渓位
4
必殺シリーズに関する章があったので、購入しました📙 単にチャンバラといっても、歴史があるのだな~と、感心してしまいました✨ 勝新さんのアバンギャルドな座頭市、観てる側も撮ってる側も、失礼ながら何じゃこりゃ?の心境だったかも(^^;2023/02/06
なつみかん
3
もう何冊か、この春日さんの本は読んでみる!2014/11/09
c
3
「天才・勝新太郎」は、新書とはいえ著述が一面的過ぎて…というか、綺麗事過ぎて余り感心しなかった。しかしだからこそ、別の角度から勝新を描いた「偶然完全」のような本が出版される切っ掛けを作った、とも言えるのだろう。ただ「タモリ論」ほどの騒ぎにならなかったのは、語られた人物の違いやロッキング・オン・ジャパン直系のミーイズム有無も勿論あるにしろ、突き詰めれば著者の人柄の違いではなかろうか。最近、著者の出演したラジオ番組を聴いたのが、他の本も読んでみようと思った切っ掛けである。兎に角何かすげー好感の持てる人でした。2014/06/04
uburoi
2
春日で時代劇といえばやはり勝新太郎だった。劇場からテレビにシフトチェンジする端境期にあって芸術家としての苦悩にハマっていく悲劇が語られる。ここで勝の理想としてあげられるのが6代目菊五郎だ。勝のというより勝もというべきだろう。昨年亡くなった播磨屋もそうだが、17代勘三郎にしてもまた谷崎の観た完成の域にあった芸として菊五郎は立ちはだかっていた。2022/02/12