内容説明
なぜ時間は過去から未来に流れるのか。なぜ過去は定まっているのに、未来は未知なのか。相対性理論や量子論などの物理学を踏まえたうえで、こうした素朴な疑問に答える時間論は、これまで殆どなかった。現代物理学の知見を考慮しなかったり、日常の感覚を無視して議論していたためである。本書は、科学が明らかにした時間と空間の本質を基本としながらも、人間が日常的に感じる時間の性質を解き明かそうと試みる。人間的時間と物理学的時間を統合する、目からウロコの画期的な時間論。
目次
第1章 なぜ今、時間論なのか
第2章 相対論的時間と時間性
第3章 量子論における時間の非実在性
第4章 時間を逆行する反粒子
第5章 マクロの世界を支配するエントロピーの法則
第6章 主観的時間の創造
第7章 時間の創造は宇宙の創造である
著者等紹介
橋元淳一郎[ハシモトジュンイチロウ]
1947年大阪生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、同大学院理学研究科修士課程修了。SF作家・相愛大学人文学部教授。日本SF作家クラブ会員・日本文藝家協会会員・ハードSF研究所所員。また予備校講師も務め、わかりやすい授業と参考書で、物理のハッシー君として受験生に絶大な人気を誇る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
時間を味わう本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘビメタおやじ
26
面白いアプローチです。時間の実在を否定する本は読んだことがありますが、科学者が時間のよって来る根拠に言及するのは初めてです。さすがに物理学者だけあって、ミクロ世界での時間の無意味性をしっかり押さえています。ここが時間性のなかでしか生きていない文系人間には辛いところです。それでも、全身的に理解できなくてもイメージはつかめました。時間性に生命は不可欠とは予想しながらも、エントロピーと生命という切り口は頷かせるものがありました。しかし、C系列をしっかり把握しているか、自信がありません。2020/05/31
SOHSA
23
なるほどと思わせる一方で舌足らずな一面も。肝心な部分の多くは語られず消化不良の感も。私自身の読解力のなさもあるのだが論理的に腑に落ちない点もあった。方向性を持つ時間の起源が生命によるものであることを説く一方で、生命の起源を30億年を超える時の重みによる奇蹟というのはどうも理解し難い。また、生命が機械でないことの理由や証拠について自分が持つ喜怒哀楽、痛い、うまいなどの感覚を機械は断じて持ち得ないと断言するところに甚だ疑問を感じる。2013/03/29
あっきー
18
⭐3 ハイデガーが登場するのだが自分の卒論(ハイデガーではない)だった実存主義を思い出すような時間論だったので共感することが多かった、生命は外界からの働きかけを感じそれに対して決定を下し外界に反応するという過程に他ならない、それは時間性の中でしか生じえない、そして並行宇宙は存在しない、存在するとしたら「意思」が進化するための自然選択の圧力がなくなるからだ、現実世界がシンドいからって多次元並行宇宙に逃げてはいけないのだ2022/04/22
陽@宇宙望遠鏡⭐︎星と宇宙とロケットが好き
15
大好きな彼氏から引っ越しの時に貰った本。出会った頃いつもタイムマシンが欲しいとよく話してたから。2人でアリストテレスやプラトンに会いに行きたいねと話してた。こんな風に本を手に取るところが彼らしいです。東大卒だし、物事を受け取って展開する視点はいつもやっぱりさすがですね。内容は相対性理論を理解してないと難しいです。哲学の素養もね。再読何回できちんとレビュー出来るかな。2017/05/15
ひろ
13
量子論や相対論が一般の人にとって難解なのは、「時間」の考え方が従来の考え方(古典物理学)とは大きく異なり、直感的な理解が難しいところにあると思う。そもそも時間の定義とは何なのか?エントロピーとは?ミクロな世界に時間が実在しないのなら、それは一体どこで生まれるのか?こうした一つ一つの疑問に対して論理を飛躍させず丁寧に書かれた解説は、他のどんな本よりも分かり易い。機材も数式も使用しない「思考実験」の面白さと、普段の生活では感じ得ない「時間の多様さ」を堪能できる一冊。2015/10/12