内容説明
藤沢周平の魅力とは何か。武家もの、市井もの、浪人もの、捕物ものそれぞれに、人と時代を見る目の確かさ、深く強く描く抜群の小説技法があげられる。著者は、戦争嫌い、熱狂嫌い、流行嫌いの藤沢周平に「反時代的な憤怒」を読み取り、「荒涼としてなつかしい物語世界を旅する悦び」を語る。「世界は悦びや愉しみや安心よりも、わずかに悲しみや苦悩や不安が多いと感じる」人間に自分を重ね、作品にふれて「これでしばらく生きていける」とつぶやく。清新な藤沢ワールド・ガイドブック。
目次
藤沢周平、その魅力の源泉―荒涼としたなつかしさ
負を生きる物語、その魅力の源泉―誰か一人は悲しまなければならない
第1部 負を生きる物語のほうへ―それは藤沢周平ではない/これが藤沢周平である(兄にかわって、ひと言言うべきことがある―武家ものと市井もの;よみがえる記憶に―市井もの一;「泣かない女」の系譜―市井もの二 ほか)
第2部 藤沢周平のほうへ―同時代作家と藤沢周平(三枚の写真から―暗転また暗転の後に;藤沢周平の誕生―反時代的な憤怒がそそぎこまれた;時代小説の暗い輝き―もうひとつの現代小説)
著者等紹介
高橋敏夫[タカハシトシオ]
1952年香川県生まれ。文芸評論家。早稲田大学文学部教授。早大大学院修了。著書『ゴジラが来る夜に』、『ゴジラの謎・怪獣神話と日本人』で怪物を通して現代の歪みを描き、『絶滅以後』『それは危機からはじまった』で95年以後の社会と心の崩壊を捉えるなど、社会事象や映画、漫画、文学を素材に鋭い現代批評を展開
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