出版社内容情報
忘れたい思い出、ありませんか?
それは半ば都市伝説のようなものだった。避暑地の林を抜けた先、花々が咲みだれる湖のほとりにひっそり佇む瀟洒なペンション「レテ」。
そこには不思議な部屋があり、一晩眠ると消し去りたいと願う記憶があとかたもなく消えるという。
その部屋の噂をどこかで聞いた人々が「レテ」を目指して集まって・・・。
料理上手だが寡黙なペンションオーナーの遠野愛文、彼をサポートするしっかり者の少女・多希、常連客で女流ミステリー作家の丸川千歳の前に、ワケあり顔の宿泊者が今日もひとり、現れる・・・・・・。
なくしたい思い出をかかえた人々に送る、切なく優しいメメント・イストワール。
内容説明
とある避暑地の林を抜けた先、花々が咲きみだれる湖のほとりにひっそり佇む瀟洒なペンション「レテ」。そこには不思議な部屋があり、一晩眠ると消し去りたいと願う記憶があとかたもなく消えるという。料理上手だが寡黙な支配人の遠野愛文、しっかり者の少女・多希、常連客で女流ミステリー作家・丸川千歳の前に、ワケあり顔の宿泊者が今日もまたひとり現れて…!?
著者等紹介
山口幸三郎[ヤマグチコウザブロウ]
2008年『語り部じんえい』で第15回電撃小説大賞選考委員奨励賞を受賞、受賞作を改題した『神のまにまに!』を2009年刊行し、小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
34
一晩眠ると消し去りたいと願う記憶が消える部屋があるという噂の湖畔のペンション「レテ」。そこに噂を聞きつけた人々がやってくる連作短編集。寡黙なオーナーの遠野愛文としっかりものの少女・多希、常連客で女流ミステリー作家の丸川千歳。離婚した幼馴染、姉に劣等感を抱く妹、ペットの死を悔やむ少女、明らかになってゆく愛文の過去、そして引き継いだ記憶の結末。確かな愛があったからこそ苦しむそれぞれのエピソードは読んでいて切なくなりましたが、けれどその先に再び紡がれてゆく関係には新たな希望が感じられるとても優しい物語でしたね。2020/12/14
よっしー
22
久しぶりの山口さんの本でした。眠ると望んだ記憶が失われるというペンション。失うまでの葛藤も勿論ですが、その周りにいる人の心境を考えるとツラいものがありました。ただ、記憶は忘れても心の奥底に何かしらの形で残るというのは素敵でした。失ったものは取り戻せない、だからこそ安易に考えたらダメなのでしょうが…失ったからこそ前向きに生きていく。それも人間の強さなのでしょうか。切なくも前向きになれるお話でした。2021/08/06
み
22
不思議な設定。その部屋で忘れたい記憶を口にして眠ると、翌朝は、花が一輪咲いて記憶は失われる。条件付で、失われた記憶を他人に渡すこともできる。作家さんは、良く考え付きますねぇ、偉大だ^ ^あたしの、忘れたいことは何だろ?2021/05/16
サクライロ
7
「たとえどんなにつらい記憶であったとしても。……後になって返してほしいと思ってももう元には戻りませんから」2022/10/10
あずとも
6
花々が咲みだれる湖のほとりにひっそり佇む瀟洒なペンション「レテ」を舞台にしたなくしたい辛い思い出を抱えた人々の切なくも優しいお話。2020/11/22