出版社内容情報
日中戦争の開始から敗戦までを名作でたどる
満州国建国以降も版図の拡大を謀(はか)る日本軍は、ついに中国と全面戦争へ。長引く戦争に疲弊する兵士たち、そして虐げられる住民。小林秀雄、阿川弘之、伊藤桂一らの名作が描き出す日中戦争のすべて。
内容説明
近代編、曠。泥濘の叫び、黄塵の嘆き。新しい視点で精選、「言の葉」の集大成。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころりんぱ
50
日中戦争のあらゆる時期を切り取った作品が数多く収録されているこの巻、とても読みやすかった。リアルタイムで書かれたものは反戦の要素がなく戦場のリポートのような感じで、戦後に書かれたものは「あの時はこうだったけど本当はこう思ってた」みたいな戦争への憎しみや嫌悪感、虚しさのようなものが露わになっている作品が多い。言論統制などで書けなかったこと、書いても表に出てこなかったこと、または思ってさえいなかったことががあるんだなと想像できる。15年…おぎゃあと生まれた子が中3になる程の期間続いていた戦争の長さを考えた。2016/09/04
勝浩1958
8
胡桃沢耕史著『東干』では物語の最後が物悲しい。日比野士朗著『呉淞クリーク』では戦場の惨状をみごとに生々しく描いている。田村泰次郎著『蝗』では朝鮮人の従軍慰安婦のことが描かれていて、おそらく戦地ではこのような日本兵による人非人的なふるまいが実際に頻繁に行われていたのであろうと想わせられる。田中小実昌著『岩塩の袋』は氏独特のとぼけた感じが戦記ものでも味わい深い。五味川純平著『不帰の暦』は淡々とした筆致が悲しさを際立たせている。2013/07/19
ophiuchi
6
浅田次郎、奥泉光他の編集委員に選ばれた小説群は、日中戦争のことをほとんど知らない私にその悲惨さを思い知らせてくれるものばかり。ボリュームにめげそうになりながら読み通した価値がありました。2012/01/27
てまり
4
ストーリー性の強い作品が多く、読みやすかった。多くの作品が詩情を湛えていて、戦争という形であってもその背後の中国の広大さをうかがわせた。このシリーズは刊行順に読んでいるけれども、これまでの巻に多い南方を舞台にした作品は兵士自身との対話をテーマにせざるを得なかったように思うけど、日中戦争では時間的にも空間的にも余裕があり、中国人、朝鮮人とも意思の疎通がしやすいことからか、コミュニケーションの問題を考えさせる作品が多いように思った。2012/04/27
Louis
2
戦争はゲームではない。綺麗事にはできない。これらの作品には思想信条に関係なく、戦争に関わった人たちの生々しい出来事が描かれている。そして80年以上前に起こったことは、現在のウクライナでも同じことが再現されているのである。人間は愚かだなと思う。2023/04/27