出版社内容情報
一本の映画、一曲の音楽から鮮やかによみがえるすばらしき日々。作家、演出家であり当代屈指の名エッセイストの待望の映画エッセイ集。
今は亡き淀川長治さんは、『「シェーン」は映画史に残る名作だがあえて一つだけ欠点を挙げるとしたら、それは白黒ではなくカラー映画だったことだ』と語ったことがある。そう、その昔、映画には色はなくモノクロだった。映画を見る一人一人が、色のないスクリーンに自分で想像の色をつけて見ていたのだ。だからこそ、映画は美しい夢になった。不良少年にあこがれながら不良になれなかった少年・久世光彦は、戦中戦後の少年期青年期を映画館の暗闇の中で、愛や死を、人間世界の諸相を見つめ、空想の翼を広げていった。映画の中の音楽もまた、のちにTVドラマの演出家となる久世少年に決定的な影響を与えた。「間諜X27」「地上より永久に」「肉体の悪魔」「レベッカ」ほか雑誌連載のシネマエッセイを中心にまとめた、著者初の映画エッセイ集。本書は映画や音楽を語りながら、実は愛や死や人生についての深い考察が張りめぐらされ、まるで良質の短編小説を読むような充実感がある。それぞれの作品に、作品データを付しガイド本としての実用性も十分。そして本書のもう一つの楽しみは、和田誠さんの装丁。1点1点の絵から映画の作品名がわかれば、あなたもかなりの映画通だ。
内容説明
あのころ映画は美しい夢だった!―待望のシネマ・エッセイ。
目次
1 燕の歌(「間諜X27」;「地上より永遠に」;「肉体の悪魔」 ほか)
2 わが心に歌えば(「ディア・ハンター」と『ゴッド・ブレス・アメリカ』;「明日に向って撃て!」と『雨にぬれても』;「ドライ・クリーニング」と『私の悩み』 ほか)
3 風景へ還る(「青い山脈」;「おとうと」;「青春の門」 ほか)
著者等紹介
久世光彦[クゼテルヒコ]
1935年、東京生まれ。東京大学文学部美学美術史学科卒業。東京放送(TBS)を経て、1979年、テレビ制作会社カノックスを設立。演出家。1992年、『女正月』の演出により芸術選奨文部大臣賞を受賞。その他、作詞・脚本・評論・エッセイなど幅広い分野で作家活動も行っている。主なプロデュース・演出作品に「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」「ムー一族」「向田邦子ドラマシリーズ」など。主な著書に「蝶とヒットラー」(第3回ドゥマゴ文学賞・日本文芸社)「1934年冬―乱歩」(第7回山本周五郎賞・集英社)「聖なる春」(芸術選奨文部大臣賞・新潮社)「蕭々館日録」(第29回泉鏡花文学賞・中央公論新社)などがある。1998年紫綬褒章受章
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