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出版社内容情報
雨音に包まれた、山の中のミュージアム。
忘れられたオルゴールたちと暮らすコウの前に、ある日、ひとりの少女が現れた。
赤く染まった髪、青く光る瞳、そして……泡を紡ぐ指先。
それは“人魚病”――いずれ、身体が泡となって消えてしまう病だった。
「――人魚姫って、呼んでくれてもいいよ?」
名前はユキ。すこし不思議で、すこし強がりで、とびきり眩しい“家出少女”。
雨宿りのように始まったふたりの時間は、やがて心のどこかを、そっと濡らしていく。
ひと夏の逃避行が奏でる、さよならのオルゴール。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
22
雨音に包まれた、山の中のミュージアム。忘れられたオルゴールたちと暮らす荻原コウの前に、ある日、家出少女の渡来ユキが現れるひと夏の青春小説。突然ミュージアムに現れた、いずれ身体が泡となって消えてしまう「人魚病」を患っていて、少し不思議で強がりでとびきり眩しいユキ。山頂に行きたいと願う彼女に、時折やってくる親友の太一も絡めながら雨宿りのように始まったかけがえのない時間。だからこそそのままにしておけなくて、コウが引きこもっていた理由も浮き彫りになっていって、彼が覚悟を決めて向き合った結末はなかなか印象的でした。2025/07/30
ほたる
12
シトラスの匂い、ヘドロの匂い、そして「死」の匂い。会話のテンポがよく順調に読み進めてしまっていたものの、物語が纏う雰囲気は重い。作中で語られるひとつの後悔に思わず目頭が熱くなり、今しか出来ないこと、今しか伝えられないこと、それらが強く強く心に響いてきた。2025/08/02
わたー
11
★★★★★面白いとは思うし、物語として1冊で綺麗にまとまっているとは思うし、なんだったら泣きもしたが、私の個人的な趣味嗜好として好きではない。亡き祖父の遺した山奥のオルゴールミュージアムで独り「立てこもり」をする主人公の前に、家出少女が転がり込んでくる。彼女はやがて泡になって消えてしまう人魚病の発症者であったのだが、この山の山頂に行ってみたいと言い出して…と始まる一夏の恋の物語。雨音に包まれた山奥の廃墟で過ごす一人と一人だった彼らが、なんてことはない交流を積み重ねてやがて自分にとって唯一無二になっていく。2025/08/03
真白優樹
8
亡き祖父のオルゴールミュージアムに立てこもる少年が、人魚の様に泡になって死ぬ病を抱えた少女に出会い始まる物語。―――例え終わりが近くとも、遺せるものは希望として。 終わりがすぐ近く、だとしても触れ合い恋をし惹かれ合う。 そんな何処か虚で寂しい中に、ほんのりとした温かさがある物語である。終わりを迎え、見送って。思い出を背負って約束を胸に歩き出すのは真っ直ぐな明日。その先に待っているのは大変な未来、だとしても。それでも真っ直ぐ生きていく、その道に光がありますように。 うん、面白かった。2025/08/05
椎名
3
所謂難病もの。ストーリーラインは良くも悪くも王道から外れることはなく、主人公を取り巻く環境はなかなか新鮮で面白い。オルゴールという題材がしっかり掘り下げられていて、初めて知ることも多かったこととゼンマイを巻き戻して繰り返し響かせることの意味を各々が見つけていたのが良かった。また妹の死や学校では輪の中心にいるであろう友人キャラも死の匂いを漂わせており、通して明るさで救う物語ではなかったと思える。正直なところありがちな印象を受けてしまったのだが、こうして思い返してみると悪くなかったと感じる。読後感の良さかな。2025/08/06
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