出版社内容情報
虚も語れば実となる。
稀代の名手が贈る偽書歴史小説集!
凄面白くて唸らせる……数々の名巨編を放ってきた著者初めての短編集!
【収録作品】
「清心館小伝」 「兵は詭道なり」と説き異彩を放った江戸の道場
「印地打ち」 真田氏の下、投石の奇襲で名を馳せた山の三兄弟
「寳井俊慶」 出奔した天才仏師の数奇な生涯
「江戸の錬金術師」 猫屋敷の蘭方医にしてからくり興行の山師
「桂跳ね」 幕末の世、将棋で結ばれた若者二人の友情と運命
内容説明
「清心館小伝」「兵は詭道なり」と説き異彩を放った江戸の道場。「印地打ち」真田氏の下、投石の奇襲で名を馳せた山の三兄弟。「寶井俊慶」出奔した天才仏師の数奇な生涯。「江戸の錬金術師」猫屋敷の蘭方医にしてからくり興行の山師。「桂跳ね」幕末の世、将棋で結ばれた若者二人の友情と運命。虚も語れば実となる。凄面白くて唸らせる数々の名巨編を放ってきた著者、初めての短編集。稀代の名手が贈る偽書歴史小説集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たま
71
史料に基づき創作を排し人物や出来事を描く史伝ものーのパロディ。『虚傳集』の場合、依拠する史料そのものが偽で、しかもいかにも実在しそうな史料が引用されており、それがまず楽しい。「『新続畸人伝』?そんな本あるんかな?」と読み始めたら、「清新館小伝」の剣術修業が余りに荒唐無稽で、この本のスタイルを納得。ただ、「印地打ち」や「桂跳ね」のラストは心に響くものがあり、普通の小説に書いて感動させてほしいよ!と思った。虚実の被膜を縫う面白さを味わえる作品集だが、読者を選ぶかも。2025/04/17
keroppi
64
タイトルに「虚」とある。この短編集に登場する文献は、全て「虚」だそうだ。異彩を放つ江戸の道場、投石の奇襲で名を馳せた三兄弟、天才仏師、幕末に将棋で結ばれた二人。それぞれに歴史小説として実に面白い。「虚」と知らなければ「実」と思ったかも。だが「虚」と知って読むから、何処が「虚」かと知的興奮をおぼえたりする。実際にある文献すら何処まで史実かも怪しいものもあるし、今世の中に伝わるニュースすらフェイクもあるようだ。そういう虚実が曖昧な現代に投げかけられた小説とも言えそうだ。#NetGalleyJP2025/01/04
がらくたどん
54
「毒を持って毒を制す」という言葉があるが「虚を持って虚を制す」とでも言えそうな物語集。戦国から幕末の「埋もれた逸材」を後世の語り手が多数の「史料」から描き出す歴史物語の伝統的な体裁を取る。その史料の多くが虚である事を除けば。極意を遁走力に置いた剣術指南、投石技の誇りを貫いた印地衆、樹の中に仏の姿を求めた仏師、科学実験を極めた江戸の錬金術師、幕末の熱気に呑まれつつ幼馴染との将棋を愛した志士。資料が虚なのだから描き出された人物像は当然「虚」であるはずなのに虚から立ち昇る際立った「真」らしさはどうだ!実に面白い2025/04/17
天の川
52
史伝小説のように読めるのだが、タイトルは「虚傳集」なのだ。史実を裏打ちするかのように提示される文献は「虚」で、取り上げられる人物(剣術指導者・投石の技を持つ兄弟・天才仏師・錬金術師)はいずれも荒唐無稽。一話目の自然天真流を率いる涼雲の理論など、声を出して笑ってしまう。いかにもな史料名や人物名、用語が史実と巧みに入れ替わっていき、凄いなぁと。とは言え、どこまでが史実でどこからが虚なのか気になってしまい、調べ始めて中断してしまう(-_-;)最後の切ない『桂跳ね』は時代小説にしていただいて浸りたかった気がする。2025/04/27
しゃが
44
面白かった、まるで歴史解説書のようだった。タイトルがなければ、「歴史小説集」と言われたら信じていたかもしれない。フィクションは虚とわかっていても…。架空の人物、参考文献、証言など設定や史実との絡め方がすごく、ラストもニクイ。戦わずして勝つ兵法は「兵は詭道なり」と説いた江戸の道場の「清心館小伝」、真田氏の下で投石の奇襲で名を馳せた山の三兄弟の「印地打ち」、幕末に将棋で結ばれた若者二人の友情と運命を描いた「桂跳ね」が印象に残った。2025/03/13